第十二話 ちょっとやりすぎたよね
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「想像は付いているだろうが厄介な事が起きた」
「……」
「今回の遠征軍だが陛下よりグリンメルスハウゼン元帥にクライスト、ヴァルテンベルクの両大将を遠征に加えるようにとの御言葉が有った」
クライスト! ヴァルテンベルク! 何の話だ? 軍務尚書、統帥本部総長も驚いている。
「それはどういう事ですかな、国務尚書」
軍務尚書が問い掛けるとリヒテンラーデ侯が顔を顰めた。
「ブラウンシュバイク公の差し金だ。陛下にあの二人を遠征軍に加えるようにと吹き込んだらしい。有為な人材を遊ばせておくのはもったいないと……」
「馬鹿な……」
思わず言葉が漏れた。あの二人が有為な人材? 味方殺しをしたばかりか事実を隠蔽しようとしたあの二人が……。もっと早くに予備役に編入しておくべきだったか……。
「軍務尚書、あの二人、最前線より戻ってから飼い殺しと言って良い状態だが、それはヴァレンシュタインと関わりが有るのか?」
一瞬だが軍務尚書が私とシュタインホフ元帥に視線を向けた。
「……いささか」
「そうか、なるほどな……」
国務尚書は頷くと言葉を続けた。
「ブラウンシュバイク公は大分腹を立てている様だな。顔を二重、三重に潰されたと周囲に言っているらしい」
侯が分かるなと言うように我々を順に見た。分かっている、屋敷を爆弾テロで破壊され多くの客、使用人を殺された。それが一つ目。
そして討伐軍の指揮官になれなかった事、それが二つ目。そして三つ目は討伐軍の指揮官を願い出た時には既にクロプシュトック侯は自殺し反逆は終結していた事……。ヴァレンシュタインの鮮やかさに比べて不手際ばかりが目立った。
貴族社会では何よりも面子を潰されることを不名誉とする。ブラウンシュバイク公はその面子を二重三重に潰されたのだ。クロプシュトック侯が死んだ今、その憎悪はヴァレンシュタインに向かっている。何らかの動きが有るとは思っていたが……。
「あの二人が武勲を立てれば当然だが昇進しそれなりの職に就く事になる。ブラウンシュバイク公は軍内部に味方を作る事になるな」
「敗北すれば?」
「敗北の責めをヴァレンシュタインに負わせる。或いはグリンメルスハウゼンにもかな。あの二人を始末出来るのであればクライストやヴァルテンベルクなど使い捨てても十分元が取れるであろう。そうではないかな、統帥本部総長」
なるほど、国務尚書の言う通りだ。勝てば上級大将が二人味方になる、その意味するところは大きい。そして敗北すればヴァレンシュタインが失脚する。そうなればグリンメルスハウゼンなど何の役にも立たぬ存在になるだろう。ブラウンシュバイク公はこちらの弱点を突いてきたわけだ。
「グリンメルスハウゼン元帥は受け入れたのですか?」
「陛下からの御言葉だ、否と言うはずが無かろう。というよ
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