第十二話 ちょっとやりすぎたよね
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長だけは昇進しなかった。しかしその事に不満そうなそぶりを見せた事は微塵も無い。どうやら自分の昇進を捨てて周囲の昇進をと軍上層部に願ったらしい。その姿が更に周囲の憶測を生んでいる。総参謀長は大逆未遂事件をあらかじめ知っていて利用したのではないか……。いかんな、俺まで埒も無い事を考えている。話を変えた方が良いだろう。
「まさか俺の所にあの二人が来るとはな」
「予想の範囲外だったか、ロイエンタール」
「そうだな」
俺が答えるとミッターマイヤーはクスクスと笑い声を上げた。こいつ、面白がっているな。もう一口ワインを飲んだ。
討伐軍として動員されたのはグリンメルスハウゼン元帥の直率部隊、他に准将の地位にある八人が率いる艦隊だ。帰還後八人の准将はいずれも少将に昇進し分艦隊司令官として配属された。レンネンカンプ艦隊にはケンプ、アイゼナッハ少将。ミュラー艦隊にはルッツ、ファーレンハイト少将。ミッターマイヤー艦隊にはケスラー、メックリンガー少将。そして俺の所にはワーレン、ビッテンフェルト少将……。まさか士官学校の同期生二人が俺の配下になるとは思わなかった……。
「まあワーレンに問題無い、問題はビッテンフェルトだな」
「卿に反発して猪突するかな?」
ミッターマイヤーが首を傾げた。
「どうかな、それも有るかもしれんがあいつ、防御が下手だからな、その方が心配だ」
「なるほど……」
遣り辛いと思っているのは俺だけではないだろう。ミッターマイヤー、ミュラーも遣り辛いと思っているはずだ。二人とも自分より年上の分艦隊司令官達に囲まれているのだ。決して楽では無いだろう、常にその能力を分艦隊司令官達に試されるはずだ。それを突破しなければ侮りを受けるだけだ……。
「卿の参謀長は如何だ?」
「ビューロー准将か、能力も有るが誠実で信頼できる男だ。良い男を貰ったよ。そっちこそ如何なんだ?」
「ベルゲングリューンか、こっちも信頼できる人物だと思う。割と剛直な所が有るな、そこも気に入っている」
ミッターマイヤーが笑い声を上げた。俺も笑い声を上げた。
「艦隊の編制も終わった、後は訓練だな」
「ああ、十一月になる前にはオーディンを発てるだろう。今回は俺と卿がグリンメルスハウゼン元帥の両脇を固める。楽しみだな」
ミッターマイヤーが“ああ”と頷いた。
帝国暦 486年 10月 15日 オーディン 新無憂宮 グレゴール・フォン・ミュッケンベルガー
新無憂宮にある南苑の一室に四人の男が集まった。帝国軍三長官、そして招集をかけた国務尚書リヒテンラーデ侯。国務尚書の表情は苦みを帯びている。わざわざ呼び出したのだ、難事が起きた事は間違いないだろう。一体何が起きたのか……。軍務尚書、統帥本部総長も不安そうな表情を隠そうとしない。
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