第十話 どうして俺を頼るんだ
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ちょっと早めに行った所為だろう、翠玉(すいぎょく)の間にはまだそれほど人は居なかった。中央にダンス用のホール、少し離れた場所に料理を置いたテーブル、壁際には歓談用のテーブルが配置されている。俺は適当な歓談用テーブルの所に行った。適当と言うのは他に人が居ないという事だ。
皆俺と話したがらないんだよ、一緒に居たがらない。このパーティ、出席者は黒真珠の間に出席できる人間だけだ。つまり爵位を持った貴族、政府閣僚、高級官僚、軍人なら将官以上の階級に有る者だ。年は若いし平民出身の高級軍人とは誰も話したがらない。ということでいつも俺の居るテーブルには理由が有って他者と関わりたくない人間とかが数人いるだけだ。当然だが話しなんてしない。
ノイケルン宮内尚書の挨拶でパーティが始まった。皇帝陛下は御疲れとかで出てこないしグリンメルスハウゼンも同様だ。主役二人が欠席ってどういうパーティだ? 普通こういうのは敵を撃破した名将とその労をねぎらう皇帝の麗しいシーンに皆が喜ぶってものだろう。それなのに……、遣る意味が有るのか? 俺にはさっぱり分からん。
「ヴァレンシュタイン大将」
リューネブルクが声をかけて近付いてきたのはパーティが始まって三十分も経った頃だった。牛肉とパプリカを煮込んだグラーシュとカトフェルサラダが美味い。
「グリンメルスハウゼン元帥が元帥府を開くそうですな、閣下が事務局長とか。他には一体どなたが来るのです? 先ずミュラー提督は当然として……」
「誰も来ませんよ。ミュラー中将達は私の方から断りました」
「……」
そんな困惑するなよ。
「私とフィッツシモンズ少佐と元帥閣下だけです」
「……それはまた、……困りましたなあ」
リューネブルクが笑い出した。おいおい、勝手に俺のカトフェルサラダを食べるんじゃない。何がいけますな、だ。困ってるんじゃなかったのか。
「実は小官もそちらの元帥府の御世話になろうかと思っていたのですよ」
「……」
「どうもオフレッサー閣下の所は居辛いのですな。理由はお分かりでしょう?」
リューネブルクが俺の顔を覗き込んだ。まあね、例の一件でミュッケンベルガーに叱責されたと聞いている。元凶としては居辛いだろうな。
「如何です、責任を取って小官を引き取って頂けませんか」
「……」
「悪い買い物ではないと思いますが」
良い悪いじゃないんだ、元々買う気が無いんだよ、リューネブルク君。それに俺はお前さんを助けただけだ。責任なんて欠片も無い。問題は君がオフレッサーに嫌われた事だ。責任転嫁はいけないな。
「三人でお茶を飲むより四人でお茶を飲んだ方が楽しいと思いますよ」
なるほど、それは有るな。あの老人の茶飲み相手を俺とヴァレリーの二人だけで務めるのは結構きついかもしれない。ついでに出征
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