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銀河英雄伝説〜悪夢編
第九話 お願いだから退役させて
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やるという事でしょうか?」
俺が問い掛けるとミュッケンベルガーは溜息を吐いた。え、違うの? 俺の疑問に答えてくれたのはシュタインホフだ。咳払いをして答え始めた。

「今回捕虜から尋問して分かったのだが反乱軍は相当にグリンメルスハウゼン提督を危険視しているようだ。つまり彼の存在は反乱軍に対し抑止力足り得る。積極的にこれを用いるべきだろう」
はあ? あの爺さんが抑止力? 積極的に用いる? 正気か? 頭おかしいんじゃないのか?

「ヴァレンシュタイン」
「はい」
「今後、遠征軍の総指揮は私ではなくグリンメルスハウゼン提督が採る事になる」
「……ミュッケンベルガー元帥、よく分からないのですが、それは何の冗談です?」
ミュッケンベルガーが顔を顰めた。飲み込み悪くて済みません、でも本当によく分からないんです。どうなってるんだ?

「冗談ではない、陛下の御健康は必ずしも安定していない。私はオーディンを離れるわけにはいかんのだ」
「……」
なるほど、あれは一時的な物ではないという事か。つまり何時フリードリヒ四世が倒れるか分からないと……。となるとだ、俺が総参謀長と言うのは……。

「分かるな、卿は総参謀長として全軍を指揮し、反乱軍を撃破するのだ」
「冗談でしょう、小官には到底無理です」
声が震えた。冗談じゃない、あの老人の面倒を見ながら全軍の指揮を執れ? 俺を過労死させる気か? 帝国軍は何時からブラック企業になった!

「退役します! 昇進は要りません、年金も辞退します、だから退役させてください!」
「それは認められぬ。帝国軍は卿の用兵家としての力量とあの老人をあやす才能を必要としているのだ」
勝手な事を言うな、エーレンベルク。俺は介護士じゃない!

「ヴァレンシュタイン中将、既に次の出兵に関しては陛下の御内意を得てある。グリンメルスハウゼン元帥を総司令官に、卿を総参謀長にだ。断る事は許されぬ」
「リヒテンラーデ侯……」
このクソジジイ共、俺を嵌めやがったな。全部俺に押し付けるつもりか! 絶対辞めてやる! 絶対にだ!



帝国暦 489年 4月30日  オーディン  宇宙艦隊司令部 エーリッヒ・ヴァレンシュタイン



「そういう夢を見た」
「……」
「最悪だろう?」
「確かに……」

顔色が悪いな、ミュラー。でもな、俺は目が覚めたときに夢だと分かって嬉し涙が流れたよ。そして眠るのが怖くなった、多分これからは毎日そう思うんだろうな。なんだってあんな夢を見たんだか……。疲れてるのかもしれない……。

「エーリッヒ」
「うん?」
「夢はそれで終わりなんだな、他には無いんだな」
ミュラーがじっと俺を見ている。まさかな、こいつ、俺と似た様な夢を見たんじゃないだろうな。その先を見たとか……。

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