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銀河英雄伝説〜悪夢編
第九話 お願いだから退役させて
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る奴は。俺は少しも喜べん、この爺さんが元帥だ。帝国はどうなるんだろう……。

捕虜を帝国側の艦船に移乗させると直ぐに戦場を離脱した。そろそろ同盟軍の艦隊は俺達が予想宙域に居ない事に気付いた筈だ。最初に考えたのは撤退だろうな。だが本隊に連絡を取ろうとして不可能だとなれば真実に気付く。慌ててこちらに向かって来るのは目に見えている。捕捉される前に逃げないと……。



「捕虜の引見ですが如何しますか」
「引見?」
クレメンツ副参謀長が小声で話しかけてきたのは戦場を離脱して一時間も経った頃だった。そういうの有ったな、形式だけど捕虜の代表と捕えた側の代表が直接会う。“宜しくね、乱暴しないでね”、“分かったよ、安心して良いよ”、そんなところだ。

「反乱軍の方はロボス大将になりますが……」
そう言うとクレメンツは困ったような表情で視線をグリンメルスハウゼンに向け、そして俺に向けた。意味ありげな仕草と表情だ。
「……私ですか? 若過ぎると向こうが傷付きませんか?」
「他にはいないと思います」

そうだよな、この爺さんに任せたらロボスはもっと傷付く。いやそれ以上にこの爺さんの正体を同盟側に知らせる事は出来ない。居眠り爺さんが元帥になる、帝国軍の最高機密だ。なんでこうなったんだろう、溜息が出た。“お気の毒とは思いますが宜しくお願いします”、クレメンツの声が聞こえた……。



帝国暦 486年 4月 24日  イゼルローン要塞  ラインハルト・フォン・ミューゼル



遠征軍が戻ってきた。六万隻の大軍に包囲されそうになったが敵の本隊を降伏させて戻ってきた。反乱軍に与えた艦艇の損害は少ないが人的損害はかなりのものだ。宇宙艦隊司令長官を始め司令部要員を丸ごと捕虜にした。反乱軍は頭脳を失ったのだ。連中は暫くの間は積極的な軍事行動を控えざるを得ないだろうと皆が言っている。

遠征軍は今日から一週間要塞に駐留し補給、修理を行うらしい。俺達イゼルローンに集められた哨戒部隊もそろそろお役御免だろう。元の辺境警備に戻るはずだ。有難くもあり残念でもある。これ以上シュターデンの顔を見ずに済む事は有難いが反乱軍が押し寄せてくれば武勲を上げる機会だった。中央に戻る事も出来たかもしれない。それなのに……。

グリンメルスハウゼンは元帥か……。どう考えても不条理だ、あの居眠り老人が元帥で俺が辺境警備の少将……。
「どうなさいました、ラインハルト様。溜息を吐かれるとは」
キルヒアイスが心配そうな表情をしていた。最近は何時も心配させてしまう。

「いや、何時まで辺境に居なければならないのかと思ったのだ」
「……一度ヴァレンシュタイン中将に相談してみてはどうでしょう。ラインハルト様の力になってくれるのではないでしょうか」
「……止めておこう、気
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