第九話 お願いだから退役させて
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操作しているが直ぐに顔を上げて私を見た。表情が強張っている。
「駄目です! 帝国軍の妨害電波で味方に通信が出来ません!」
「ええい、連絡艇を出せ! 各艦隊に二隻、八隻を出すのだ!」
「帝国軍攻撃してきます!」
「こちらも攻撃だ! 持ちこたえるんだ、味方が来れば挟撃できる!」
彼方此方から力の無い声が上がった。駄目だ、将兵達は持ちこたえる事が出来ないと見ている……。
スクリーンに映る帝国軍は圧倒的な威容を見せている。そして味方は為す術も無く打ち砕かれている……。何故だ、何故こうなった。三倍の兵力で帝国軍を包囲するはずだった。だが気が付けば四倍の兵力でこちらが攻撃されている……。負けるかもしれない、絶望が胸に込み上げてきた。
帝国暦 486年 4月 13日 オストファーレン エーリッヒ・ヴァレンシュタイン
帝国軍は奇襲に成功した。戦況は一方的と言って良い。艦橋は歓声で爆発しそうだった。だが皆が喜ぶ中ヴァレリーだけは表情を消している。辛いんだろうな、小さな声で話しかけた。
「部屋で休んではどうです?」
「いえ、大丈夫です」
「無理はしなくても良いですよ」
ヴァレリーは笑みを浮かべた。大丈夫って言いたいんだろうけど引き攣ってるよ。このまま帝国に留めるのは可哀想だ。いずれ同盟に返してやらないと……。結構俺の事を気遣ってくれるんだ。前回の戦いで倒れたからな、心配してくれてるらしい。
捕虜交換か、或いはフェザーン経由でこっそり返すか、難しいな。後でミュッケンベルガーにでも相談してみようか? 随分貸しが有るよなあ、少しはこの辺で返してもらわないと……。でも戻しても大丈夫かな、スパイ扱いされたら可哀想だし……。
「兵力差も有りますが一方的ですな」
「そうですね」
クレメンツ副参謀長が話しかけてきたので頷いた。やっぱり双璧は凄いわ、動きがまるで違う。容赦なく同盟軍を叩き潰している。レンネンカンプも良い、練達、そんな感じだな。ミュラーも良くやっている。始めての艦隊指揮なのにあの三人に遅れることなく着いて行っている。
この艦隊、帝国でも精鋭部隊と言って良いだろうな。あの問題さえなければ……。その問題を見た、指揮官席で嬉しそうにスクリーンを見ている。溜息が出そうだ。
「提督、そろそろ反乱軍に降伏を勧告したいと思いますが」
「おお、そうじゃのう。弱い者苛めは可哀想か」
「……降伏を勧告します」
弱い者苛めじゃなくてさっさと終わらせて撤退しないと危ないだろう。同盟軍の方が俺達より兵力は多いんだ。連中が戻ってくる前にこの戦場から離脱しないと……。オペレーターに命じて降伏を勧告するとそれほど間を置く事無く同盟軍は降伏を受諾した。オストファーレンの中で爆発したかのような歓声が上がる。良いよな、喜べ
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