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銀河英雄伝説〜悪夢編
第八話 なんでそうなるの?
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問い掛けにミュッケンベルガーは弁解がましい口調で答えた。まあそう言うしかないよな、負けて帰って来るのを待っていたとは言えん。

『お倒れになられてからもう五日になる』
「皆が知っているのでしょうか」
ミュッケンベルガーが渋い表情で頷いた。
『隠し通せたのは最初の二日だけだ。後は已むを得ず宮中において公表した』

宮中において公表したか……、貴族どもを集めて状況を説明した、そういう事だな。しかし三日で同盟にまで知られている、早すぎるな、早すぎる。宮中内部にフェザーンに通じているネズミが居るのかもしれん。或いはネズミは貴族の中に居るのか……。

「オーディンは混乱しているのしょうか」
周囲の人間が緊張した。
『いや、今のところは大丈夫だ』
じわりと空気が緩む。誰かがホッと息を吐く音が聞こえた。
『地上部隊もこちらの味方だ。今のところは問題は無い。しかし綱渡りではあるな、何かきっかけが有れば暴発しかねん』

ブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯が何処まで自制できるかだな。お互いにかかっているものが大きい。娘を皇帝に出来れば帝国を手中にする事が出来る。だが失敗すれば破滅だろう。お互い引けない所まで来ている。ミュッケンベルガーの懸念は杞憂では無い。

「参謀長、撤退した方が良くはないかのう。反乱軍は大軍じゃし、陛下が御不例では……」
『そうだな、提督の言う通りだ。撤退するべきであろう』
「……撤退は出来ません。現時点での撤退は危険です」
周囲がざわめいた。皆が何を言っているのだという様な表情で俺を見ている。

『どういうことだ、ヴァレンシュタイン。ここは撤退するべきであろう』
言外に話しが違うという響きが有った。気持は分かる、だが前提が狂った。もう撤退は出来ない……。
「このまま撤退すれば反乱軍がイゼルローン要塞に押し寄せる危険性が有ります」
皆が凍りついた。艦橋の空気が痛いほどに緊張している。

「反乱軍は皇帝陛下御不例を知っているのです。おそらく帝国が内乱の危機の有る事も推測しているでしょう。四個艦隊を動員した彼らが我々の撤退だけで満足するとは思えません。これを機にイゼルローン要塞攻略を再度行う可能性が有ります」
彼方此方で呻き語が起きた。ミュッケンベルガーも呻いている。

当初はグリンメルスハウゼン艦隊の撃破が目的だっただろう。だがフリードリヒ四世が重態だと知った、だからこちらに情報を流している……。要塞を攻めたいと政府に言っても先日負けたばかりだ、許される可能性は小さい。だがこちらが撤退するのを追う形で要塞攻防戦に持ち込めれば……。俺の考え過ぎだろうか?

『イゼルローン要塞での防衛戦はどうか?』
「無理です。指揮系統が確立していない以上混乱するだけでしょう。閣下がオーディンから増援を引き連れ
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