第六話 そんな事を言ってるんじゃねえよ!
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不愉快だ、わざと負けろというが兵を無駄死にさせろというのと同じだ。軍人の考える事じゃないし人間としても間違っている。悪い意味で権力者の考えそうな事だ、人を人とも思わない、踏み躙る事に慣れた権力者の考え……。
「ヴァンフリート、イゼルローン、勝つ事で反乱軍に大きな損害を与えました。帝国は優勢を保持している。負ければその優位が消し飛んでしまいます。軽々しく負けろなどと口にしないで頂きたい」
リヒテンラーデ侯が不機嫌そうな表情をしている。だがミュッケンベルガーの言う事は正論ではある。皮肉なのはその勝利をもたらしたのがグリンメルスハウゼン艦隊だという事だな。
「損害が小さければ良かろう、負けたという形を作るのだ。それを以ってグリンメルスハウゼンを退役に追い込む。それしか有るまい、なんとかならんか」
帝国軍三長官が渋い表情をした。勝手な事ばかり言う、そんな表情だ。
損害は小さく負けた形か。負けた形を作るのは難しくは無いだろう。敵が大軍だと言って撤退すれば良い。しかしそれでは退役に追い込めないしグリンメルスハウゼンも戦場に出る事を諦めないだろう、大体爺さんの責任に出来るのか、そこが問題だ。
いや、待てよ……、退役でなくても構わんわけだ。戦場に出さない事でもかなり違う、それなら可能かな……。戦場に出さない、いや戦場に出ても無駄だと思わせる、帝国のためにならないと思わせる……。可能性は有るな、グリンメルスハウゼンはヴァンフリート、イゼルローンで大功を立てた。同盟軍もあの老人に注目しているはずだ。
やるなら今かな。メッキが剥げる前にピカピカのグリンメルスハウゼンを同盟軍の前に放り出す……。このジジイどもを助けるのは不本意だがこれ以上あの老人に振り回されるのはもっと不本意だ。やってみるか……。
帝国暦 486年 1月 15日 オーディン オストファーレン ナイトハルト・ミュラー
新無憂宮から戻ったエーリッヒは直ぐに俺を参謀長室に誘った。新無憂宮に行く時は憂欝そうだったが今は表情が明るい、どうやら例の件は上手くいったようだ。ようやくこれでこの艦隊から離れられる……。席に座るなりエーリッヒがニコニコしながら話しかけてきた。
「昇進が決まった。私は中将に、卿は少将に昇進だ」
「なるほど、それで」
「グリンメルスハウゼン提督も上級大将に昇進だ。退役は無い」
退役は無い、にも拘らずエーリッヒの表情、口調は明るい。
「では俺達は異動か」
思わず声が弾んだ。エーリッヒが声を上げて笑う。
「いや、異動は無い。我々はグリンメルスハウゼン艦隊に所属する」
「……」
大丈夫か? 何でそんなに明るいんだ。とうとう壊れたなんてことは無いよな。
「次の出兵が決まった」
「……」
「遠征軍の総司令官はグリ
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