第五話 呆れてものが言えん
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いない。新たな人事はまだ発表されていないのだ。悪い兆候だ、おそらくはグリンメルスハウゼン老人の扱いをどうするかの調整が上手く行っていないのだろう。勝ち戦なのだ、それも大勝利だと言って良い。恩賞など大盤振舞いでも良い筈だ。それが出来ないのはあの老人の扱いをどうするかで揉めているからとしか思えない。
悪い兆候は他にも有る。俺が新無憂宮に呼ばれた事だ。呼び出したのはミュッケンベルガー元帥、待ち合わせ場所は紫水晶の間と黒真珠の間を隔てる通路だ。俺は馬鹿面を下げて廊下に立っている。……なんか視線が煩わしいんだよな。皆が俺を見ている。
「ヴァレンシュタイン少将」
声がした方向を見るとラインハルトだった。そうか、新年だからな、オーディンに戻っていたのか……。ここに来たという事はあれかな、新年だからアンネローゼに会いたいとでも頼みに来たのかな、それとももう会っていて御礼言上に来たのか……。
「久しぶりですね、ミューゼル少将」
はてね、近付いて分かったのだがラインハルトの表情はあまり明るくない。どうやら頼み事は却下されたらしい、いや謁見そのものが却下された可能性も有るな。皇帝陛下は飲み過ぎで直ぐに病気になる。新年だからな、飲み過ぎは良く有る事だ。
「イゼルローンでは目覚ましい武勲を上げられたとか、羨ましい事だ」
新年の挨拶よりもそっちか、ラインハルトらしい。もっとも余り戦争の話はラインハルトとはしたくない、当たり障りなく答えるか。
「運が良かったと言えるでしょう。艦隊戦に自信が無いから混戦を避ける事が出来ました。結果的にそれが武勲を上げる事に繋がったと思います」
「運が良かったというのは謙遜だろう、卿の力量は皆が認めている」
「有難うございます、今日は謁見ですか?」
「ああ、次の遠征に自分を加えて欲しいと頼んできたところだ」
話題を変えたつもりだったが意味が無かったな。まあラインハルトから戦争を取ったら何も残らない事が証明されたわけだ……。
「次の遠征は決まったのですか?」
俺が問い掛けるとラインハルトがちょっとバツの悪そうな表情をした。
「いや、未だの様だ。だが私はまた哨戒任務で辺境に行かなければならない。だから今の内に頼んでおこうと思ったのだ……」
「なるほど」
辺境任務は出世を目指す若い士官にとっては島流しも同然だ。基本的に帝国では上級者にお願いをする時は直接会って頼むのが礼儀だ。となれば辺境に送られるのはそれ自体の機会を失うという事でもある。縁故や後ろ盾のない士官にとっては絶望その物だろう。姉が皇帝の寵姫であるラインハルトはまだ恵まれている方だ。もっとも本人はそんな事は認めないだろうが……。
「卿は何故ここに?」
「呼び出しを受けました」
「呼び出し?」
訝しげな表情だ。詮索されるのも面倒だ、適
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