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銀河英雄伝説〜悪夢編
第五話 呆れてものが言えん
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却下できよう。領地を与えてもおかしくないだけの功績は立てている』

「上手い手だ、考えたのはヴァレンシュタインかな? 司令長官」
私が問い掛けるとミュッケンベルガー元帥が苦笑を浮かべた。
『その通りだ、あの男も逃げるのに必死でな』
私が笑うとミュッケンベルガー元帥も声を上げて笑った。ようやく笑うことが出来た。

「リヒテンラーデ侯に相談してみよう、侯も我らの苦衷には薄々気付いている。正直に話せば力になってくれるはずだ」
『宜しくお願いする。それとシュタインホフ元帥にも話していただきたい』
「統帥本部総長にもか」
ミュッケンベルガー元帥が頷いた。あの男とは決して関係が良好とは言えぬが……。

『リヒテンラーデ侯には帝国軍三長官からの頼みとした方が良いと思うのだ』
「なるほど」
『それに万一出兵となって功績を挙げればあの老人は帝国元帥という事になる』
あの老人が元帥、悪夢だ。ミュッケンベルガー元帥も同様だろう、スクリーンに映る彼の表情は渋い。

『その場合、何処にあの老人を押し込むか……。一艦隊司令官という訳には行くまい?』
「確かにそうだな、それが有ったか……」
『軍務次官、統帥本部次長、宇宙艦隊副司令長官、或いは帝国軍三長官の一つを占めるかもしれぬ』
思わず顔が引き攣った。

「冗談は止せ、司令長官」
ミュッケンベルガー元帥が首を横に振った。
『冗談ではない、現実にそうなりかねぬのだ、軍務尚書。幕僚総監でも良いがその場合はクラーゼン元帥をどうするかという問題が起きるだろう』
「……」
『もはや私と軍務尚書だけの問題では無い。軍、そして帝国の問題として対応すべきだ』

ヴァレンシュタインだな、あの小僧がミュッケンベルガー元帥に吹き込んだ。あの老人を自分だけに押し付けるな、上で対応しろという事だろう。だが確かに此処までくれば帝国の問題として対応しなければならぬのも事実……。

「分かった、シュタインホフ元帥に話そう。彼も分かってくれるはずだ、その上でリヒテンラーデ侯に相談してみよう」
『宜しくお願いする』
「うむ」
やれやれだ、あのようなボケ老人一人に帝国が振り回されようとは……。悪夢以外の何物でも無いな。



帝国暦 486年 1月 15日  オーディン  新無憂宮 エーリッヒ・ヴァレンシュタイン



オーディンはようやく新年の喧騒から解放されつつある。遠征軍は昨年の暮れにオーディンに戻ってきた。皆は新年を家族の元で過ごせると喜んでいたが俺にはどうでもいい話だ。オーディンが賑やかな中、俺は年末年始を家でひたすら惰眠を貪る事で過ごした。非難は受け付けない、当然の権利だ。俺はもう精神的にも肉体的にも限界だ。

昨年のイゼルローン要塞攻防戦の戦功に対する総括と賞罰は未だ終わって
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