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銀河英雄伝説〜悪夢編
第五話 呆れてものが言えん
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行かなかった』
ミュッケンベルガー元帥が渋い表情で頷いた。

『もはや我が生涯に思い残す事無し。そう言ったのだがな、その後でこの上は陛下の御宸襟を安んじる事だけが望みだと……』
「……御宸襟を安んじるか、それは出兵を望むということだろうな」
ミュッケンベルガー元帥が溜息を吐いた。気持ちは分かる、出来る事なら我らの宸襟も安んじて欲しいものだ。

『ヴァレンシュタイン少将が悲鳴を上げている、これ以上は勘弁してほしいと。……異動を希望している』
「それは……」
難しいと言おうとしたがミュッケンベルガー元帥が先に言葉を続けた。

『戦闘終結後、熱を出して倒れた。……あの艦隊と老人は帝国軍にとってはお荷物でしかない。背負わせるのはもう限界であろう』
「……」
なるほど、ミュッケンベルガー元帥の表情が暗いのはそれも有るか……。溜息が出た。

「しかしヴァレンシュタイン少将の異動を認めたとして後任はどうする。戦場に出さぬのなら誰でも良いがあの老人が出兵を求めている以上、それなりの人物が必要だが……」
私の言葉にミュッケンベルガー元帥が首を横に振った。

『無理であろうな』
「……」
『あの艦隊がお荷物であることは皆が知っている。その艦隊を背負って少将は大功を立てたのだ。後任者は当然だが比較される事を覚悟せねばならぬ』

「それは厳しい……」
気が付けば呻き声が出ていた。
『誰も引き受けようとはすまい。無理に押し付ければ逃げ出すだろう、後任者を選ぶなど無理だ』

常に無く力の無い声だ、思わず溜息が出た。確かにミュッケンベルガー元帥の言う通りだ。私だとてその荷物を背負いたいとは思わない。それを一年も背負わせたか……。
『なんとかあの老人を退役させねばならん、或いは出兵を諦めさせるか……』

「しかし、手が有るかな」
私の問いかけにミュッケンベルガー元帥が頷いた。手が有るか……。
『畏れ多い事ではあるが陛下を上手く利用出来ぬかと考えている』
「陛下を?」
これまで陛下を利用してきたのはグリンメルスハウゼンだ。それを今度はこちらが利用する?

『グリンメルスハウゼンが傍におらぬのは寂しいと言って貰う事は出来ぬかな。陛下のお言葉が有ればあの老人も出兵するとは言えぬはずだ』
「なるほど」
上手い手だ。その上で侍従武官長にでもしてしまえば良いだろう。大将、上級大将であれば階級的にもおかしくはない。

『或いは今回の武勲の恩賞として領地を与えるか……』
「領地?」
『うむ、その上で領地の発展に努めよとでも言っていただければ……』
上手い! あの老人を領地に縛り付けることが出来る!

「なるほど、それであれば出兵は出来ぬな」
声が弾んだ。ミュッケンベルガー元帥も頷いている。
『希望してもそれを口実に
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