第四話 芸を仕込むのも容易じゃない
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……トール・ハンマーを利用するという事か?」
俺の問いかけにエーリッヒが頷いた。なるほど、俺と似た様な事を考えているらしい……。
帝国暦 485年 11月 11日 オストファーレン エーリッヒ・ヴァレンシュタイン
スクリーンにはミュッケンベルガーが映っている。こちらは味方を放り出して後退したのだがミュッケンベルガーは特に文句は言わなかった。面白くは無かっただろうが自由裁量権は与えて有るし大事な予備戦力でもある。今となってはミュッケンベルガーの唯一の武器なのだ。俺達をどう使って勝利を得るか、彼の頭の中はそれで一杯だろう。
『では提督の艦隊を以て反乱軍の後背を突くと言うのか』
「その通りでございます、如何でしょうか」
『うむ、……反乱軍は後退しようとするであろうな。そこを叩く、いやトール・ハンマーで一撃を加える、そういう事だな』
「そういう事でございます」
ミュッケンベルガー元帥とグリンメルスハウゼンが話している。スクリーンに映るミュッケンベルガーの表情は必ずしも明るくはない。戦況は酷い混戦状態になりつつある。グリンメルスハウゼン艦隊だけに任せていれば勝てたかもしれないという思いが有るのかもしれない。
或いはグリンメルスハウゼンと作戦を話し合っているのが不本意なのか……。でもな、この爺さんを退役させるには爺さんを活躍させる必要が有るんだ。爺さんの作戦で勝ったとなれば最高じゃないか。ミュッケンベルガーも大声で爺さんを褒め称えるはずだ。爺さん、喜ぶぞ。
ミュッケンベルガーがチラっと俺に視線を向けてきた。お前の提案かと言いたいらしい。その通りだ、俺の提案だよ。混戦状態にある両軍を遠回りに迂回し同盟軍の後背に出る。それを防ぐには同盟軍は兵を退かざるを得ないんだが結構これが難しい。
今戦っている帝国軍を引き連れながら後退しなければならないのだ。帝国軍の後退を許してはトール・ハンマーの一撃を受けかねない。かと言って後退が遅れればグリンメルスハウゼン艦隊に後背を突かれる……。原作でラインハルトがやった事の真似だ。もっともこっちの方が兵力が多いからな。より効果的だし安全でもある。
グリンメルスハウゼンに教えるのは大変だった。とにかく呑み込みが悪いんだ、ミュラーと二人で根気よく教え込んだんだが戦争よりもこっちで疲れそうだ。早くこの老人から離れないと、そのためにもここで勝利が必要だ……。
ミュッケンベルガーが俯いて考え込んでいる。二度、三度と頷いてからこちらを見た。
『提督の提案を採ろう。各艦隊に作戦を周知しなければならぬ、作戦開始は三時間後としたい』
「承知しました」
まあこの混戦状態じゃ通信は傍受されかねない、連絡艇を使うのが無難だろうな。通信が切れる前、もう一度ミュッケンベルガーがこ
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