第四話 芸を仕込むのも容易じゃない
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を誘う。タイミングがずれれば、トール・ハンマーの一撃で艦隊が撃滅されてしまう。一方帝国軍は同盟軍をD線上の内側に引きずり込もうとする。
その際、自分達まで要塞主砲に撃たれてはならないから、退避する準備も怠らない。互いに砲撃戦を行いながら相手を牽制するのだ。虚々実々の駆け引きが続くが、これは兵士たちにとって恐ろしいほどの消耗を強いる事になる……。
という事でこんな難しい運動はウチの艦隊には無理だ。ゼークト提督の駐留艦隊に任せてグリンメルスハウゼン艦隊は要塞付近で待機している。おそらく多くの帝国軍兵士が高みの見物かと俺達を白い目で見ているだろう。でもな、最も激しく踊るものが最も激しく疲れるって言うからな。誰が言ったんだっけ? ロイエンタールだったか。まあ誰でも良いか、ウチは省エネ艦隊なんだ、効率よく勝つ。
二時間程過ぎた頃、ミサイル艇がこっそりと前面に出てきた。来たか……、待ちかねたぞ、ロボス。こちらの手順をグリンメルスハウゼン提督に説明するか。あくまでこの戦いの主役は指揮官席で座っている老人だ。俺は黒子に徹さないと……、老人の傍に近付いた……。
帝国暦 485年 11月 10日 オストファーレン ナイトハルト・ミュラー
エーリッヒがグリンメルスハウゼン提督の傍により耳元で何かを囁いている。提督は不思議そうな表情でその言葉を聞いている。時折首を傾げ問いかけるがエーリッヒは諭すように提督に話しかけている。ようやく納得したのだろう、グリンメルスハウゼン提督が二度、三度と頷いた。
「何を話していたんだ」
戻ってきたエーリッヒに問いかけると小さな声で
「もう直ぐ反乱軍が攻撃をかけてくる、その対処法を説明していた」
と答えた。
おいおい、本当か? エーリッヒの顔を見たが生真面目な表情だ、どうやら本当らしい。“どんな方法だ?”今度は俺も声を潜めて問い掛けたがエーリッヒは首を横に振って答えなかった。答える必要が無いという事か、それとも答える暇がないという事か……。
「上手く行くのか?」
「最初は」
「最初は?」
問い返すとエーリッヒは厳しい表情で頷いた。
「その後は味方がどう動くかで変わる」
味方? 敵ではなく味方なのか……。
「反乱軍のミサイル艇から目を離さないでくれ。正面の艦隊の動きは陽動だ」
「……ミサイル艇?」
「ミサイル艇の攻撃が始まった時が勝負だ」
慌ててスクリーンに視線を向けた。ミサイル艇、ミサイル艇は何処だ? 居た! 一か所に集まっている、三千隻程か。あそこは……、あそこはトール・ハンマーからは死角の位置だ! ミサイル艇がスルスルと動き出した! 一斉に要塞に向けて多頭ミサイルを発射する! 要塞の表面に白い爆発光が湧き上がり砲台、銃座が吹き飛ぶのが見えた。連中、
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