暁 〜小説投稿サイト〜
銀河英雄伝説〜悪夢編
第三話 俺達は同志だ
[4/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
ような出来事に遭遇した。ヴァレンシュタイン少将を認めた士官十人程が一斉に道を譲って脇に控えたのだ。上級者とすれ違う下級者は上級者に道を譲って敬礼する。これは同盟でも帝国でも同じ。見たところ皆佐官だったから彼らが少将に道を譲った事はおかしな事ではない。

問題は距離よ、距離。普通は大体三メートルから五メートルぐらいの距離で道を譲る、それ以内だと敬礼がおざなりだと相手に取られかねない。それ以上になると余程階級に差が有るか、相手が実力者だと認識した場合になる。でもって少将の場合なんだけど、どう見てもあれは五メートル以上前から道を譲っていたわ……。

ミュッケンベルガー元帥は自分に用意された執務室で人払いをして少将を待っていた。機嫌は良くない、苦虫を潰したような表情だ。その表情で私をジロッと見た。背筋が寒い。
「少将閣下、小官は外で控えております」
「その必要は有りません」
「……」

こんな所に居たくないと思ったけどミュッケンベルガー元帥も不機嫌に黙り込んだまま何も言わない。仕方なく部屋に残った。少将が言葉を続ける。
「元帥閣下、報告書はお読みいただけたでしょうか?」
「……」

元帥が口を開いたのは三十秒ほど経ってからだった。
「報告書は読んだ。シュターデンからも事の経緯は聞いている。手数をかけたようだな」
「ローゼンリッターに対する猜疑心を利用しました。おそらく反乱軍は彼らを前線に出す事は避けるはずです。当分閣下を苛立たせるようなことは無いと思います」
「……」

重いわ、空気が重い。ミュッケンベルガー元帥を苛立たせているのはワルターよりも少将なんじゃないの? ヴァレンシュタイン少将が元帥のお気に入りというのは絶対嘘。私はその証明現場に居る。
「グリンメルスハウゼン提督も総司令官閣下のお役に立てた事を非常に喜んでおいででした。これまで自由裁量権を頂きながら十分に活用出来なかった事を申し訳なく思っていたようです。後程総司令官閣下より親しくお言葉を頂ければより一層の働きをする事でしょう」
「……」

顔が、顔が引き攣ってる……。お願いです、もう止めてください。とばっちりは私にも来るんですよ、少将。でも少将はそんな私の願いを無視して言葉を続けた。
「小官としましては今回の出兵でグリンメルスハウゼン提督に大きな武勲を立てていただきたいと思っております。軍人としての名誉が満たされれば今後は出兵に拘る事は無くなるのではないでしょうか」
「……」

なるほど、そう言う考えも有るんだ……。あ、ミュッケンベルガー元帥が考え込んでいる。
「小官は元帥閣下も同じ事を御考えなのではないかと推察しておりました。それ故グリンメルスハウゼン提督に自由裁量権を与えたのだと。これは小官の思い違いでしょうか?」

元帥が唸り声をあげた。

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ