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銀河英雄伝説〜悪夢編
第一話 自由裁量権って何だよ
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そんなところだろう。

「両名とも止めよ」
ミュッケンベルガーが不機嫌そうな表情で俺達の諍いを止めた。シュターデンがホッとしたような表情を見せたがミュッケンベルガーに“言葉を慎め”と注意されると顔を蒼白にして“はっ”と答えた。言葉を慎め、意味深だな。

ミュッケンベルガーはシュターデンの発言を否定はしていない、言い過ぎだって事だ。運がいいよな、シュターデン。グリンメルスハウゼンは何も気付いていない、或いは気付いていない振りをしている……。隣に座っているミュラーに視線を向けたが微かに笑みを浮かべていた。しょうがない奴、そう思ったかな。

「反乱軍が回廊の出口を封鎖している以上、こちらとしてはイゼルローン要塞を利用した攻防戦に持ち込むのが最善だろう。おそらくは反乱軍もそれを望んでいるはずだ」
その通りだ、同盟軍はミサイル艇でのイゼルローン要塞攻略を考えている。

「各艦隊は適宜に出撃して反乱軍を挑発、イゼルローン要塞へ誘引せよ」
ミュッケンベルガーの言葉に皆が頷いた。さて、俺達はどうするべきかな、勝手に動くのは怒られそうだが……。多分予備かな。

「グリンメルスハウゼン提督」
「なんですかな、総司令官閣下」
「貴官には自由裁量権を与える。我が軍の勝利に貢献して欲しい、期待している」
会議室がざわめいた。なんだって? 自由裁量権? ミュラーを見た、愕然としている。俺の聞き間違いじゃない!

「自由裁量権! 有難うございます、総司令官閣下、御信頼に必ず応えます!」
喜んでいる場合か! 皆が驚く中ミュッケンベルガーだけは無表情にこちらを見ていた。最初からそのつもりか! 背筋に寒気が走った!

将官会議の終了後、旗艦オストファーレンの参謀長室でミュラーと話をした。ミュラーの顔色は良くない、おそらくは俺も同様だろう。俺達は以前からミュッケンベルガーは自由裁量権をグリンメルスハウゼンに与えるつもりだったのだという推測で一致した。

「自由裁量権か……。一つ間違えば指揮権の分割だな。どう考えても有り得ない話だ。そうだろう、エーリッヒ」
「……」
ミュラーの言う通りだ。どんな指揮官でも指揮権の分割を嫌う、自ら言い出すなど有り得ないしそれを言い出したのがミュッケンベルガーというのも有り得ない。となるとどう受け取るべきか……。

「勝手にやれ、勝とうが負けようが自分は関知しない、そんなところかな?」
「そうだろうね、そう考えるとミューゼル少将が異動になった理由も分かるような気がする。皇帝に縁の深い人間を一挙に二人失うのは将来に差支える、元帥はそう判断したんだと思う」
「なるほど、俺達を失うのは想定内か……」
「そういう事になるね」

これ以上俺達に振り回されるのは御免だというわけだ。ヴァンフリートであれだけの武勲を上げ
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