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銀河英雄伝説〜悪夢編
第一話 自由裁量権って何だよ
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督には軍事的才能は皆無です。だから艦隊の状況をまるで分かっていない」
「……」
「グリンメルスハウゼン提督が先の出兵に参加できたのは提督が皇帝陛下と親密な関係にあったからだ。そうでなければとっくに退役になっている」

“この艦隊の司令官はお飾りでな、それこそお前の言う貴族のお坊ちゃま、いや御爺ちゃまだ”
リューネブルクの言葉だったけどあれは本当だったんだ。帝国って信じられない……。

「時間がないな、艦隊の訓練をしなければ……」
「そうだな、俺はまだ死にたくない」
「私もだ、生き残るために努力しようか」
「ああ」
二人が五回目の溜息を吐いた。どうしよう、私とんでもない所に来てしまったみたい……。



帝国暦 485年 10月 3日  イゼルローン要塞  エーリッヒ・ヴァレンシュタイン



帝国軍は今イゼルローン要塞の会議室で将官会議を開いている。遠征軍約五万隻以上、イゼルローン要塞駐留艦隊も含めれば総勢約七万隻の艦隊を率いる将官が会議室に集まった。もっともその頂点に立つ総司令官ミュッケンベルガー元帥の表情は必ずしも明るくはない。彼にとって状況は不本意なものになりつつある。

「反乱軍はイゼルローン回廊の出口を封鎖したようだ。残念だが叛徒どもの勢力範囲に踏み込んでの艦隊決戦は不可能になったと判断せざるを得ない。思ったより彼らの軍の展開が速かった……」
「訓練などで時間を無駄に費やした艦隊が有りますからな、困ったものです」

ミュッケンベルガーと宇宙艦隊司令部作戦参謀シュターデン少将の会話に皆が俺達グリンメルスハウゼン艦隊の人間を見た。シュターデンは露骨に蔑むような目で俺を見ている。上等だな、シュターデン。訓練の邪魔をしたのはお前だろう、あれが無ければもっと早く訓練を終わらせることができた。大体原作だって要塞攻防戦になるんだ。それを俺達の所為にするか、ケンカ売るなら買ってやるぞ。

「シュターデン少将の仰る通り無駄に時間を費やした艦隊が有るなら問題だと小官も思います、厳重に注意すべきでしょう」
あらあら皆信じられないものを見たような目で俺を見ている。
「シュターデン少将、一体その艦隊は何処の艦隊ですか、指揮官は誰なのか、小官に教えて頂けませんか」

シュターデンが顔を真っ赤にして口籠った。ここでグリンメルスハウゼンの名前は出せないよな。何と言っても老人はフリードリヒ四世のお気に入りだ。心の内でどれだけ軽蔑して罵っても口には出せない。出せるんだったらミュッケンベルガーだって苦労はしないのだ。

爺さんを怒らせれば後々厄介なことになりかねない。皆が気不味そうに視線を逸らした、巻き添えは喰いたくない、そんなところだな。何人かはシュターデンを蔑むように見ている。皇帝の寵臣を愚弄した思慮の足りない愚か者、
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