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銀河英雄伝説〜悪夢編
第一話 自由裁量権って何だよ
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国暦 485年 6月 1日  オーディン  ヴァレリー・リン・フィッツシモンズ



「拙いことになったみたいだよ、ナイトハルト」
「そうだな、拙いことになったみたいだ」
「妙にこっちの要望が通ると思ったんだ」
「おかしいよな、どうみても」
目の前で男二人が顔を顰めている。一人は私が副官を務めるヴァレンシュタイン少将、もう一人はナイトハルト・ミュラー准将。二人ともまだ若い、少将は二十歳、准将は二十四歳、私より年下だ。

二人とも前回の戦いで大功を上げ二階級昇進した。帝国でもっとも注目を浴びる若い将官、前途有望な将官だ。その二人が顔を顰めている。
「あの、何が拙いのでしょう」
私の言葉に二人は答えなかった。ほんの少し私を見て溜息を吐いた。

「昇進はしたが異動は無しか。私の宇宙艦隊司令部入りの話は消えたらしいよ、ナイトハルト」
「そうか、そう言えばミューゼル少将は国内の哨戒任務に就くことになったな。次の遠征に参加したいと希望を出したが却下されたそうだ」
「グリンメルスハウゼン提督が次の遠征にも参加を希望したという噂が有る」
また二人が溜息を吐いた。

「軍内部では妙な噂が流れている。卿はミュッケンベルガー元帥、エーレンベルク元帥のお気に入りだそうだ。いずれはグリンメルスハウゼン提督の艦隊を卿が引き継ぐそうだ」
「一週間前なら笑い飛ばしたんだけどね、どうやら冗談じゃなくなったらしい」
また二人が溜息を吐いた。これで三度目だ。

「あの、良いお話ではないのですか? 上層部から高く評価されて将来も明るい、次の出兵も決まったのですよね?」
二人は私を見て四度目の溜息を吐いた。視線が痛い、お前は何も分かっていない、そんな視線だ。

「グリンメルスハウゼン艦隊は帝国でもっとも期待されていない艦隊です」
「はあ?」
どういうこと? ヴァンフリートで最大の武勲を上げた艦隊が期待されていない?

「エーリッヒの言うとおりだ。あの艦隊は帝国の問題児、役立たずを集めた艦隊なんだ。まともに戦争なんて出来る艦隊じゃない」
「武勲を上げていますが……」
恐る恐る問い掛けると二人の表情がますます渋くなった。

「運が良かった。運だけじゃないけどとにかく運が良かった」
「卿の力量もあるさ」
「だといいけどね」
「……」
信じられない、何かの間違いだと思いたい。同盟軍はそんな艦隊に敗れたの? でも目の前の二人を見ているととても間違いだとは思えない。

「グリンメルスハウゼン提督は次の出兵への参加を希望したと聞いています。そこまで悲観することはないのではありませんか?」
二人の要求するレベルが高すぎるのだ、そうに違いない。一縷の希望を込めて訊いてみたが返ってきた二人の答えは悲惨としか言いようがなかった。

「提
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