第一話 自由裁量権って何だよ
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出た、私だけでは無い、軍務尚書も溜息を吐いている。
「軍務尚書、正直に言う、私はあの艦隊をどう扱ってよいか分からぬのだ」
軍務尚書が顔を顰めた。グリンメルスハウゼンが全く当てにならぬことは分かっている。だがあの艦隊はどう考えれば良いのか……。帝国軍の問題児、役立たずを集めた艦隊、どうみてもお荷物の艦隊のはずだった。ヴァンフリートでは武勲を上げたがどこまで信じて良いのか……。
「当てにせぬことだ、当てにして失敗すればとんでもないことになる。戦力としては数えず遊軍として扱う。それ以外にはあるまい」
「遊軍か、功を上げれば儲けもの、そういう事だな」
「そういう事だ」
酷い話だ、一個艦隊を遊軍として扱うか。しかし確かに当てには出来ぬのだ、となれば已むを得ぬことではある。軍務尚書の表情が渋い、おそらくは私も同様だろう。
「それよりヴァレンシュタイン大佐の事だがどうする。卿は宇宙艦隊司令部への異動を希望していたが……」
それが有ったか……、思わず舌打ちが出そうになった。
「取り下げざるを得まい、あの艦隊を少しでもまともにするためにはあの男が必要だ。当てにするわけではないが全くのお荷物では困る」
何をしでかすか分からぬところはあるが負けるよりはましであろう。軍務尚書が“その通りだな”と言って頷いた。
「ところで軍務尚書、グリンメルスハウゼン艦隊から外して欲しい人間がいる」
「ほう、誰かな?」
「ミューゼル少将だ」
「ミューゼル……、なるほど、グリューネワルト伯爵夫人の弟か。確かに外した方が良かろうな」
軍務尚書が二度三度と頷いた。
「それでどうするかな、卿の直属部隊に組み込むか」
賛成しないと言った表情だ、もちろん私もそんな事をするつもりはない。
「いや、お荷物は一つで十分だ、二つは要らぬ。持ちきれぬよ」
「それが良かろう、では留守番だな」
「うむ」
まったくどうして帝国軍にはわけのわからぬ荷物が多いのか……。口には出せぬが持たされるこちらの苦労を少しは陛下にも考えていただきたいものだ。
「司令長官、あの男、ヴァレンシュタイン大佐だが二階級昇進に異議を唱えているようだな」
「というと?」
「副参謀長を務めたミュラー中佐も二階級昇進させて欲しいと言っているらしい。そうでなければ自分の二階級昇進は受けられぬと」
「ほう」
ふむ、以前にも思ったが出世欲の塊というわけではないわけか。それがせめてもの救いだ。
「差支えなければ昇進させてはどうかな。あの二人にグリンメルスハウゼンの面倒を見させる。お守り代だ、苦労するだろうからな」
「そうだな、そうするか」
軍務尚書が頷いた……。私なら昇進よりも異動を願うだろう。そう思うと少しだけ可哀想だと思い、同時に少しだけいい気味だとも思った。
帝
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