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『ステーキ』
サツキの話
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考古学者が惹かれてしまう〜
 万年前の化石にだって〜
 それはあったのさ〜
 僕らキレイに重ねよう〜
 未来の人の為になるよなこの夜を〜 ♪

 奥の部屋では男衆がみんな下を向いて、耳を塞いでいた。指が鳴った。ミラーボールが回り出した。増藻とサツキはペルシャ絨毯の上にいる。「都会には星がないよね。都会には星がないよね。田舎の価値は都会が決めるよね」二度目の指が鳴った。誰かがしゃがれた声でブルースを唄っている。「潰れちまった声も、はじめのうちはキレイだったんだね。キレイな時期があるから歳をとれるんだよ」三度目の指が鳴った。大きなベッドの下から、風に乗って雲が流れてくる。何も言わず胸を、お尻を揉みしだいた。自分の股間も揉みしだいた。「耳たぶか?」耳たぶも揉みしだいた。四度目の指が鳴った。事務所の端っこにある用具入れから、「すいません、ボタン3つしかないんですけど」と、快活に新入りのアルバイトが出てきた。アルバイトの男のブリーフの上に、長く勃起したペニスがはみ出していた。増藻は、ワンステップ・ツーステップ・ボディーブロー。ペニスの男は床で芋虫みたいにクネクネしている。増藻は強い息を静かに吐いて事務所を出て行った。奥の部屋から数人の男が出てきたから、サツキは驚いて走って逃げた。
 リン君は、ミラーボールが散らばせた光が流れてゆくのを見ていた。この部屋が宇宙の端っこにありながら、神様のふところにあるような気がした。
「都会には星がないから、悪いことが起こるんじゃないかな」とつぶやいた。
 どこか遠くで、サツキの愛した158本の男根が、さざ波を感じてピクピクとした。16頭立てのレースで、自分の賭けた馬が16頭中17着になった、みたいな勃起不全の夜のことだった。

 夜中に増藻さんが私の所に訪ねてきて、「五百万あるか」と、訊いて、それをつかんで走っていった。後で聞いた話だが、夜の失態を演じた相手が、以前アダルトビデオに誘った女に似ていたんだとか。その女のセックスの流通を、金で止めに行ったらしい。私は思う。何故、いままで幾人もの人間をクスリで貶めてきたかを考えないのだろうか。なかなか不思議だ。一つ良い兆候がある。増藻さんの身体からよからぬ空気が漂ってきていた。そろそろ、あっちの世界へ足を踏み入れたか。電話で話を聞く。
「南の国に行きたい」
「お供します」と私は答えた。
 会計の男は、その晩に、必要な電話をすべてかけた。

 飛行機が日本の領海を出た頃だろうか。増藻さんが、「あれ?」と言って、急に立ち上がった。トイレから帰ってくる増藻さんのグレーのスーツの股間が、黒く濡れていた。同じような事が、チャンギ空港に着くまで複数回あった。会計の男の鼻に、小便の匂いだけではなく、後ろ側の匂いも届いていた。体臭にそれが出ていたんだ。
「自分に関係のない不
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