第一部
第四章 〜魏郡太守篇〜
三十六 〜将星、集う〜
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たい」
「……そうだな。特別な事はない、ただ、私と皆は、主従の関係とは思っておらぬ。寧ろ、仲間と言う方が正しいな」
「仲間? しかし……」
「無論、上下の関係が皆無、とは申さぬ。だが、少なくとも、私は仲間と思う者達との間に、壁を作るつもりはない。想いが同じ者同士、として」
「想い……」
彩は、そのまま黙ってしまう。
「……土方さん。元皓から聞いたけど、この魏郡で苦しむ民を救うつもりなんだろう?」
沮授が、いつもの口調で問いかけてきた。
「そうだ」
「じゃあ、他の民はどうだっていいのか? 隣の幽州や青州にだって飢える民は大勢いる。いや、大陸中至る所に、だ」
「誰が、そのような事を申した?」
「なら、出世を遂げて、高官になるつもりかい?」
「そのつもりもない。沮授、人には分、というものがある。それを超える事など、それは神の所業ではないのか?」
「…………」
「ならば、己の力が及ぶ限り、最善を尽くす。それで、一人でも多くの民が救われるのであれば、私はそうすべきと考える」
「……そっか。アンタって、強いんだな」
そう言った沮授の顔は、晴れやかになっていた。
「おいらの真名、アンタに預ける。この嵐に、アンタの手伝いをさせて欲しい」
「私の仲間になる……そうだな?」
「ああ。えっと、土方さん……じゃ何だか他人行儀だな。どう呼べばいい?」
「皆、好きに呼んでいる。どうでも構わぬ」
「じゃあ、旦那で。改めて宜しく、旦那」
……好きに、とは申したが。
まぁ、良かろう。
「歳三殿。……私も、宜しいか?」
彩が、私の前で跪く。
「無論だ。私で良ければ、だが」
「いや、今の私には、歳三殿と共に歩むのが最善、そう思っただけだ。……改めて、宜しくお願い申す」
「いいだろう」
「忝い。では、私は今後、殿と呼ばせていただく」
よもや、二人揃って、とは思わなんだが。
……両者とも、優れた人材だ。
これに驕る事なく、私もより励まねばなるまいな。
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