第一部
第四章 〜魏郡太守篇〜
三十六 〜将星、集う〜
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になく厳しい声を出す。
「な、何だよ?」
「太守様はお許しになったけど、やっぱり僕はそれじゃ駄目だと思う。人様に物事を頼むんだ、言い方があるんじゃないか?」
沮授は怯んだように、言葉に詰まる。
「嵐、この少年の言う通りだ。やはり、頼み事をする以上、礼を尽くすべきだ」
「彩さんまで。……わ、わかったよ」
沮授と彩は、私の前に跪いた。
「……土方様。改めて、お願い申し上げます。我が主、韓馥捜索に、お力添え願いたく。何卒」
「私からも、改めてお頼み申す。歳三殿、我々にご助力賜りたい」
その言葉に、今し方まで険悪な雰囲気だった愛紗が、少し表情を和らげた。
「やれば出来るではないか。そのままの物言いであれば、例えご主人様がどう仰せだろうと、断固として反対するつもりだった」
やはり、愛紗が釘を刺したか。
如何に悪意がなかろうとも、流石に礼を欠いたままでは示しがつかぬからな。
「さて、主。如何なさいます?」
「後は、お兄ちゃん次第なのだ」
「……ふむ。反対の者は?」
皆、否はないようだな。
「では、両軍で韓馥殿捜索を行う。田豊、沮授。二人で協力し、手筈を整えよ」
「御意です!」
「了解だ、じゃなくて、です」
それにしても、仮にも刺史が我先に敵前逃亡の上、行方知れずとは、な。
無事であったとしても、罪は免れまいな。
「……阿呆が」
「……愚かな。醜態を晒したまま、逝くとはな」
変わり果てた韓馥が見つかったのは、凡そ半日が過ぎた頃。
刺史の身分相応に、身なりに気を使っていたのが災いしたのであろう。
斬殺された上に、衣装は剥ぎ取られ、下帯一枚の姿で、荒野に打ち捨てられていた。
下手人は、まず見つかるまい。
亡骸を、このままにはしておけぬ。
輜重隊の空いた荷車で、韓馥の居城へと運ぶしかあるまい。
亡骸を遺族に引き渡し、都に報告の使者を出した後、ひとまず皆でギョウへと戻った。
「兵は沙汰があるまで、この魏郡にて預かる。……お前達はどうする?」
黒山賊の事で、後始末も含めて皆、飛び回っている。
……だが、私はどうしても、彩と沮授を放っておく気にはなれぬ。
二人には、身の振り方について、好きにさせるつもりでいた。
仮に敵に回せば厄介な相手になるであろうが、まだ若い二人を束縛するような真似は好まぬ。
「もし、仕官を望む先があるなら、其処に向かうが良い。路銀は用意させよう」
その言葉に、彩が顔を上げた。
「歳三殿。一つ、お聞かせ願いたい」
「何だ?」
「……歳三殿の許には、優れた将や軍師が集まっている。その絆の強さは、私も何度となく見せて貰っている」
沮授も顔を上げ、彩の言葉に聞き入っている。
「何故、そのような関係を築く事が可能なのか。私は、それが知り
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