暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン 〜無刀の冒険者〜
マザーズロザリオ編
episode6 そら
[3/4]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話

 「書きあげてねっ! 私も、楽しみにしているからっ!」

 ふわりと、風にさらわれるようにポリゴン片となって消えた。その小さな体の残した僅かなポリゴン片が俺の顔に反射する。唐突な、あまりにも唐突な別れ。

 でも、俺は。

 「おおっ、勿論だ! ぜってー書きあげっから、楽しみにしてろよ!」

 笑って、拳を突き上げた。

 それが、彼女の望みだったから。最後まで涙を見せなかった彼女に、俺の方が泣いては恰好がつかない。それはSAOで俺と一緒にいてくれた「ソラ」に対しても、このALOで俺を支えてくれた「チビソラ」に対しても、だ。だから。

 「ぜってー、ぜってー最高の物語にしてやるから!」

 天国まで、機械の世界まで届けと、その声の限りに叫んだ。
 その声は、まるで自分のものとは思えないほど力強く感じた。

 あたかも世界を救う、『勇者』の声のように。





 しかし。

 「……あーっ、……」
 「シドくんっ、なにか弁解はあるかなっ?」
 「いやー……仕事の執筆で詰まって……」
 「そのたびに私がメンタルケアに呼び出されるとは何事かーっ!!!」
 「いやいや、そんな言ったって!!!」
 「シド君のメンタルは豆腐だー! 豆腐メンタルだーっ!!!」

 この物語は、そんなに綺麗には終わらないのだった。
 終わらない、のだから。

 シドと、彼を囲む愉快な仲間たちの冒険は、まだまだ、続いていくのかもしれない。


◆???◆


 「おや、―――さん。今日は、起きていらっしゃるのですね」

 和服の女が、問いかける。病室独特の真っ白いベッドにいる少女は、いつもはつらそうに眠っていることが多いのだが、今日はいつもとは違ってその体を起き上がらせていた。入ってきた和服の女性を見て、にっこりと笑顔を浮かべる。

 「ええ、今日は調子が……、よくって、ですね」

 少女の声は、掠れたように細かった。見れば体は痛々しいほどに細く、肌は抜けるように白い。色素というよりは『存在そのものの濃さ』の抜け落ちたようなその佇まいは、彼女の病院暮らしが非常に長いことを如実に表している。

 そして、その折れそうなほどに細い指が。

 「今日も、その本を読んでいたのですか?」
 「ええ……ふふっ、ホントに、……おもしろくって」

 テーブルの上に置かれた、本のページを、めくっていく。

 「会いたいなあ。……この本を、書いた人に」

 夢見るように、憧れるように、少女が呟く。
 それは、少女がなんども伝えた言葉。

 それに対して、和服の女は。

 「ふむ……いいかもしれませんね。少なくともあちらには、拒む理由はもうないでしょう」

 いつもとは、違う言葉
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ