マザーズロザリオ編
episode6 ユウキを、見送って
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に会えて良かったと、思ってくれているだろうか。
「―――ッ!!!」
直後、激しい衝撃が俺の隠れる大木を大きく揺すった。見なくても分かる。ユウキの放った、必殺のオリジナルソードスキル、《マザーズ・ロザリオ》。俺の知る、最高に美しい剣技。その強烈な十一連撃の放つ光は、まるで彼女の最期の命の輝きの様に思えた。
その輝きを、魂に焼き付ける。
涙で見えない目に代わって、魂に、しっかりと。
―――へんだな……なんだか、力が入らないや……
弱くなっていく、ユウキの声。アスナの、泣きそうな励まし。
その全ての声を、俺は全身全霊で脳に刻みつける。
絶対に、絶対に、忘れないように。
涙は、ますます激しくなっていく。
喉がしゃくり上げそうになるのを、必死に歯を食いしばって堪える。
……と。
俺の聴覚に、幾つかの羽音が捉えられた。
合奏のように入り混じった種族の奏でる羽音。水妖精、火妖精、土妖精、影妖精、鍛冶妖精。五つの羽音は言うまでも無く、『スリーピングナイツ』のメンバーだ。
彼らは、どうだったろう。
俺の常軌を逸した入れ込みは、迷惑では無かったか。
彼らと彼女の最期を、素晴らしいものにしてあげられただろうか。
―――しょうがないなあ……みんな……
困ったような、それでも、何かが優しい響きの含まれた、ユウキの声。
その声に被せる様に、今度はさっきとは比べ物にならない、大きな羽音が聞こえた。
妖精たちだ。
全ての種族の妖精たちが、ログインしているほぼすべてのプレイヤーと思われる数で、大挙してやってきてくれているのだ。こんなことをするのは、キリトか、アスナか。
「―――ぅっ、っ!!!」
嬉しかった。
ユウキの様な人間は、多くの人間に見送られるべきなのだ。ユウキは、自分の笑顔が与える力を知らなかった。その笑顔が、弾むような声が、どれだけの力を与えて、希望をくれていたのかを、知らなかった。彼女はそれを当たり前だと思っていたけど、そんなことはないのだ。それは、紛れも無く天賦の才で、愛されるべき力だ。そんな才能を持つ者は、ひっそりと去るべきではない。それが当たり前で無く、素晴らしいことだと、知っていくべきなのだ。
『彼女』とは違って、ユウキは、そのことを知ってから、逝ける。
止まらない涙は、もう視界どころか意識まで霞ませていく。
チビソラが、小さな手で精一杯に俺の頭を抱きしめる。
ユウキは、幸せだったか。
今この時、笑っているか。
滲む意識で、必死に問い続ける。
その答えは。
―――だって……最後の、瞬間が、……こんなにも、満たされている……
まるでその声が聞こえてい
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