暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン 〜無刀の冒険者〜
マザーズロザリオ編
episode5 『勇者』2
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奪ってしまったのは、俺なのだ。だから。

 (……俺は、シドを、超えていかなくちゃいけないんだっ……!)

 かつての『勇者』……あの世界を終わらせた『英雄キリト』として、俺はその剣を振り抜いた。





 意識が、どんどん遠のいていく。
 それに伴って、視界はみるみる狭まっていく。

 もう、残された時間は、少ない。
 だが。

 (それは、お前だって同じだろう、キリト!)

 奴の剣もHPも、既にかなり限界に近付いているはずだ。
 そして俺のHPも、もう赤の危険域。決着は、近い。

 「おおおおおっっっ!!!」

 先に動いたのは、キリト。
 絶叫を上げての二刀の構えは、エフェクトフラッシュを纏うことは無い。

 しかし。

 「―――ッ!!?」

 その異様な迫力に、俺はさっきまでの連続剣と同等かそれ以上の脅威を感じ取った。ここに突っ込んではいけない。いや、たとえ避けに徹したとしても、この剣は避けきれない。それでも、逃げなければ一瞬で細切れにされてしまう、そんな確信を抱かせる、気迫。

 その気迫に。

 「っ、おおおおっ!!!」

 怯みそうになる体を、警鐘をならす本能を絶叫でねじ伏せて、突進する。
 俺の体は、さらに加速していく。キリトのそれを、真っ向から迎え撃つ。

 決めていた。
 俺はこの男を、一発ぶん殴ると決めていたのだ。

 まだだ。
 まだ俺は、この男の顔面に拳を入れていない。それまでは、終われない。

 振われた剣は、霞むほどの速さでの連撃。十を軽く超えても止まることのない、凄まじい連続技。

 ソードスキルですらない、しかしポリゴンがぶれるほどの速さで繰り出される連撃と、美しい軌道を描く剣戟。鋭い目が、《闇を纏うもの》とスピードでのポリゴンの構成遅延によって見えないはずの俺の体を、まるで見えているかのように見据える。

 決意を秘めた、強い意志の瞳。
 俺と同じ、自分の思いを貫くために、力を振うものの目。

 「おおおおおっっっ!!!」

 吠えた。知らぬ間に、喉から音が響いた。

 加速した意識が更に早まり、世界がレンズをかけたように鮮明になる。霞んでいた剣が、一瞬だけ、ビデオを一時停止したように動きを止める。俺の首筋を狙う黄金色の剣がはっきりと見える。左手で振り降ろされるその剣。よけられない。

 ならば。

 「うおおおおっっっ!!!」

 伸ばした右手。銀の輝きに反射する、激しい蒼のエフェクトフラッシュ。
 体術スキル、《クラッシュ・バインド》。

 特殊効果の為の時間を稼ぐ余裕は無い。掴んだことを確認した後、すぐに威力を解放。最強の剣、《聖剣エクスキャリバー》を《カタストロフ》が破壊できると
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