第一部
第四章 〜魏郡太守篇〜
三十五 〜采配を振るう者〜
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「そうだが?」
「その場合、太守さんと言えども、豪族さんから選ばれた方々には、気を遣う必要もあるでしょうねー」
「…………」
「でも、お兄さんの場合は違うのですよ。前の太守さんと違って、お兄さんは陛下から直接、任じられたのです」
「……だから、どうした?」
思いの外、察しが悪いな。
「では、申し上げますね。お兄さんは、陛下の直臣、とも言えます。つまり、お兄さんの命は陛下の命でもあるのですよ」
「詭弁だ!」
「そうだ! どう選ばれようとも、郡太守には変わりないぞ!」
黙って聞いていた郭図と逢紀が、まくし立てる。
「そうでしょうか? 本来、郡太守は、その地方の責任者。その下にある官吏は、その命に従う……それが、本来の制度であり、定めですが?」
稟の指摘に、二人は言葉に詰まったようだ。
「だ、だが、今までの習わしでは!」
「今までは、それでも良かったのでしょう。ですが、今までがそうだったから、未来永劫そのままでなければならない……そんな決まりは何処にもありませんよ」
「…………」
風も稟も、正論を言ったまでの事。
どうやら、勝負あったな。
「さて。話が逸れたが、韓馥殿の救援は一刻を争う。星、すぐに出せる兵数は?」
「はっ」
星はチラ、と郭図達を一瞥して、
「郡全体を合わせても、まともな戦闘に耐えられるだけの兵は揃いませぬな。どうやら、前の太守殿が討ち死にされた後、まともに軍事を取り仕切る人物が不在だったようです」
「そうか。では、連れて参った兵から選抜するしかあるまい。どれだけ揃えられる?」
「そうですな。守備兵の事を考えると、一万、というところでしょうか?」
一万か。
韓馥がどれだけ兵を残せるかにもよるが、少々厳しい戦いになるやも知れぬな。
「では、一万で良い」
私は愛紗と鈴々を見て、
「将はお前達二人とする。直ちに手配りを」
「御意!」
「合点なのだ!」
飛び出していく二人。
「指揮は私が執る。田豊」
「は、はいっ!」
名指しの糾弾にも、黙って耐えていた。
性根も確かだ、後は素質を見てみたい。
「お前も従軍せよ。此度の軍師を命ずる」
「え……僕が?」
皆、呆気に取られている。
「そうだ。不服か?」
「い、いえっ! 御意です!」
「なりませぬ! そのような」
再び、異を唱えようとする逢紀。
「……二度、同じ事は言わぬ。良いな?」
わざと、抑えた声で言い放つ。
それに刃向かえるだけの胆力は持ち合わせておらぬようで、騒ぎ立てていた者共は黙り込んだ。
「では、急ぎ出陣の準備にかかれ。他は追って沙汰する」
大多数の文官共は形ばかりの礼を、それ以外の者ははっきりと礼を返した。
数刻後。
輜重隊は後からついてくるように指示し、急ぎ出
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