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東方攻勢録
第九話
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はある程度指示を与えると、そのまま無線をきった。


「さて、相手がこちらに来るならば……それ相応の対応が必要になってきますね」


男はそういって溜息をつくと、別の書類を取り出して整理を始めていった。






地霊殿 とある一室


「……」


部屋の中では、一人の少女が椅子に座って本を読んでいた。


「……この本ももう何度目かしら」


そういって少女は溜息をつく。

革命軍に地霊殿をのっとられて以来、少女は一日のほとんどをこの部屋で過ごす。別に監禁されているわけではないが、外にいると居心地が悪いからだ。


「……こいし達は無事だろうか」

「入るぞ! いいか?」


独り言をつぶやいていると、ノックと共に男の声が聞こえてくる。少女は嫌な顔をしながらも、「どうぞ」と声をかけた。


「古明地さとり、地上より敵勢力がくる。防衛のため、二名お借りするぞ。いいな?」


兵士は入ってくるなりそう言い放った。

借りるというのは、地霊殿に住む妖怪を借りるということ。さとりにそれを伝えにきたのは、彼女がここの主だからだ。

本当ならば嫌だといってやりたい。だが、彼女に断るという選択肢はなかった。


「わかっているな? 断れば……」

「ここに住む私のペットを皆殺しにするということでしょ。わかってる……好きにしなさい」

「了解した」


男はそれだけを言い残すと、そそくさと部屋を後にした。

一人静かな部屋の中に取り残されたさとりは、何を思ったのか本をとじると、そのままベットの上で横になった。


「……」


何も言わずに天井だけを見る。みんなを助けたい……そんな意思だけが、心のながでぐるぐると回り続けている。

だが、自分は何もすることはできない。自分ひとりでは何もできない。さとりは自分の無力さだけを身にしみて感じていた。


「……こんな主で……ごめんなさい……みんな……」


そう呟いたさとりの目からは、一滴のしずくが静かに流れていった。

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