キャリバー編
百二十八話 霜の巨人の王
[8/11]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
からたった一つのお宝を探しだすと言うのは、いくらなんでも難易度が高すぎる……
「金槌……?あぁ!!」
「うわっ!!?何だよ兄貴……」
文句のありげな顔で自分を睨んだキリトに、リョウは二ヤリと笑って返した。
「思いだしたぜキリト!!サンキュー!」
「え、は、はぁ!!?」
言うが早いが突然リョウは奇行に出た。ソードスキルを、“地面に向けて”放ったのだ。
薙刀 六連撃技 《斬華 砲雷》 物理一割 雷九割
放たれたのは雷の刃だ。突き刺さった冷裂から紫電が地面を伝い……宝の山にぶち当たった。
「な!?」
「っ……!」
生み出した雷を無視して、リョウは宝の山を見渡す。見えた。生み出した電撃に反応するように、宝の向こうで青紫色の光がまたたいた!
「キリトォ!!」
「あぁ!!」
言うが早いが、キリトは既に駆けだしていた。一瞬で宝の山まで接近すると、そのままそれに手を伸ばす。
キリトが宝の山から重そう引っ張り出したもの。それは間違いなくフレイヤの言う黄金の金槌だと言えた。既にフレイヤはキリトの近くまで接近している。
「っ、フレイヤさん!!」
キリトはフレイヤに向けて思いっきりそれを投げ、見事なフォルムで彼女はそれを受け止める。その瞬間、事は起きた。
俯くように体を丸め、白い肩を震わせた彼女が、小さな声で言った。
「…………ぎる……」
さて、北欧神話で、雷と金槌、この二つのフレーズに、見事に当てはまるアイテムが一つ有る。北欧神話を知る人ならば、いや、あるいは神話を知らぬ人でも、その名には一度は聞き覚えのある人も多いだろう。
「……みなぎるぞ……」
その名は、《雷鎚ミョルニル》。雷の力を宿す、北欧神話でも指折りに強力なアイテムだ。多くのゲームの多くのメイスが、これと同じ銘をさずかっており、中には実際ゲーム内でかなり強力な物もある。
フレイヤさんの体から、スパークが走り……直後、それが凄まじい爆光と共に弾けた。
「みな……ぎぃぃぃぃぃぃるぅぅぅおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!」
《ミョルニル》とは、即ち《粉砕するもの》の意味を持つ。
実際、神話の中で多くの巨人の頭を砕いたとされ、世界蛇ヨルムンガンド以外のあらゆる生物を一撃で屠ったそれを扱うのは、それまた扱うにふさわしいナイスミドルの神だ。
そう、もうおわかりだろう。
今現在無数の雷と共に巨大化している彼女、否、彼こそその正体。
最早フレイヤさんの面影一切なく、長いひげを蓄えてスリュムと向き合ったその巨神に向けてリョウは叫んだ。
「頼むぜぇ……トールのおっさん!!」
その名を、《雷神トール》。
神々の敵たる巨人を無数に討ち取ったとされる、北欧神話きっての戦神である。
────
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ