第6話 遠山家
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今日から身を寄せる俺の実家は、駅から少し離れた所にある。
東池袋高校からは、ギリギリ徒歩圏内だ。
商店街をかすめるようにして歩き、古い一戸建ての多い住宅地に出る。路地でキャッチボールをしてる子供たち、チャリンコで警邏するお巡りさん、雑種のネコとすれ違い……寂れたタバコ屋の角を曲がり、材木屋の前を通り……もう少し歩いた所にある日本家屋が、俺の実家だ。古いが、けっこう広い。
(久しぶりだなぁ、実家)
と、門に向かう角を曲がろうと思ったら、
「ちょっと待って、お兄ちゃん!」
――かなめに手を掴まれて止められた。
レキもそれに合わせて足を止める。
「何だ? どうし……」
そこまで言いかけて気づく。かなめの手が少しだが震えていることに。
「かなめ……もしかしてお前、緊張してるのか……?」
「そ、そりゃあちょっとはするよ……。初めて自分のお爺ちゃんたちに会うんだから……」
なるほど……
しかし意外だな。かなめのことだから、予め爺ちゃんたちに会ってから学校に来たのかと思ってたんだが……
それに、いつものかなめならアメリカ人特有の堂々さで、緊張もせずすんなり会えるはずだ。
……まあ考えても仕方ない……かなめも緊張する時くらいあるか。クラスに初めて来たときも珍しく緊張してたし。
「爺ちゃんたちに何の連絡も入れてないのか?」
「先にサードが行って、あたしが行くことと事情を話してると思うけど……あたし自身はまだ……」
「……そ、そうか。まあ気にすることないと思うぞ。爺ちゃんたちはあまり細かいことは気にしない人たちだからな」
そうやって、かなめの緊張を解こうと声をかけている中、俺の頭の中でかなめのさっきのセリフが何度も繰り返される。
『先にサードが行って――』
……サードが……どこにだ? もしかして爺ちゃんの実家か……まさか……
「おいジジイ。道の清掃終わったぞ。奥義を教えろ」
聞こえる。聞こえるぞ。角の先から、今考えてしまっていた奴の声が。
そいつの姿を確認するために、そー、と角の先を覗いてみると――
「お前は近所づきあいってモノが分かっとらーんッ! 向こう三軒両隣の前も掃除せんか! 次は鉄拳制裁じゃぞ!」
――着流し半纏を重ね着して、角刈り頭がすっかり白髪になったヨボヨボの爺ちゃんが、ぽかーん! と、下駄でジーサードの頭を家から出てきて叩いていた。
「チッ」
舌打ちしつつも、あの凶暴なジーサードが……ちゃんと従って、箒を持ち直してる……!
そのあまりの姿に、俺は肩を下げながら、まだ出るかどうか迷ってるかなめを連れて角を曲がる。
「ジーサード……お前、何してるんだ……」
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