第一部
第四章 〜魏郡太守篇〜
三十四 〜ギョウ入り〜
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翌日。
予定通りに、出立の運びと相成った。
皆を城門のところで集めているところに、孫堅と華琳が姿を見せた。
「では、達者でな」
「うむ。孫堅もな」
と、孫堅は手を振る。
「おいおい、今更他人行儀は止せ。俺の事は睡蓮で構わん」
「唐突に真名を預けるか。……良いのか?」
「ああ。お前は何と言っても、雪蓮らの婿になって貰わねばならん男だからな。なあ、雪蓮?」
孫策はニコリと笑みを浮かべ、
「そうね。あなたならわたしは構わないわ。そんな訳で、わたしの事も雪蓮と呼んでね?」
「……その話なら、断った筈だが?」
さっきから、風達の視線が、突き刺さるようだ。
「ふふふ、残念だったな。江東の虎は、狙った獲物は逃さない主義でな」
「……ともかく、真名は預かろう。私も、歳三で良い」
「じゃ、改めて宜しくね、歳三♪」
結局、黄蓋と周泰からも、主人に倣って真名を預けられた。
「あら、私の誘いは断ったのに、孫堅のは受けるのかしら?」
華琳……笑顔なのに迫力を出すのは如何なものかと思うが。
後ろに控える夏侯惇を振り返り、
「春蘭。貴女から見て、歳三はどう?」
「は。ただの優男ではありませんな、少なくとも腕は確かですし、骨もあるかと」
「そう。なら、貴女も真名を預けたらどう?」
「か、華琳様?」
……だから、何故そういう展開になる?
「勿論、強制はしないわよ。貴女自身で、どうするか決めなさい」
「うう……」
夏侯惇は暫し躊躇してから、叩き付けるように、
「で、では。おい、土方。私の真名は春蘭だ、仕方ないから預けておいてやる!」
「……私は、紫雲……宜しく」
劉曄まで、か。
真名という奴、信頼の証ではあるのだろうが。
一旦預けられると、それ以外の名で呼ぶのは侮辱に当たる……厄介な風習でもある。
「主。……信じておりますぞ?」
「歳三様に限って、節操のない真似などあり得ませんよ」
「風もそう思いますけど、真名を一度に預かるなんて、お兄さんも隅に置けないのですよー」
「……皆、止せ。歳三殿が困っておられるぞ?」
無論、少なくとも、全員敵に回すよりは遙かにいいのだが。
……と。
またしても、妙な視線を感じる。
疾風と周泰……いや、明命も気付いたようだな。
「歳三殿」
「お待ち下さい」
反応しようとした疾風を、明命が制した。
「正体ならば、私が確かめて参ります。疾風さまは、そのまま出立して下さい」
「明命の言う通りだ。歳三、後は気にせずに向かうがいい」
「……わかった。睡蓮、そして明命。頼んだぞ」
気がかりではあるが、今はまず、冀州に向かう事だ。
「ご主人様!」
「あ、お兄ちゃんなのだ!」
道中は滞りなく、我々はギョウに到着。
城門のところには、
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