第一部
第四章 〜魏郡太守篇〜
三十四 〜ギョウ入り〜
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愛紗と鈴々が並んで手を振っている。
そして、義勇軍の同志に元黄巾党から降った面々が、待ち構えていた。
「鈴々。いろいろとご苦労であった」
「へへー。鈴々、頑張ったのだ」
じゃれつく鈴々の頭を、撫でてやる。
「愛紗、皆を連れての行軍、如何であった?」
「はい。士道不覚悟はご主人様がお許しにならぬ、それは全軍に徹底していますから。特段、問題はありませんでした」
「わかった。ご苦労だったな」
そして、兵達に向き合う。
「皆の者。長らく待たせたが、黄巾党との戦いは終わった。そして、皆と共に落ち着く場所も得た。改めて、よしなに頼むぞ」
「応っ!」
皆、意気揚々としている。
「では、入城する! 私に続け!」
ギギギ、と重い城門が開かれていく。
中では、文官や武官が、勢揃いしていた。
その筆頭なのだろう、中年の太った男が、進み出てきた。
「土方様。お待ちしておりました」
「うむ。土方歳三、勅令により魏郡太守として参った」
「ご苦労様にござります。私は、郭図と申します。こちらは審配に逢紀です」
本来であれば、袁紹に仕えた者ばかりだな。
……そして、一癖も二癖もある、そんな面構え。
「ささ、城中へご案内致しましょう。歓迎の祝宴の用意、整っていますぞ」
如才のなさは、袁紹の参謀として鳴らしただけの事はある。
……だが。
「郭図とやら」
「はい。何でしょう?」
「……この有様は、如何なる事か?」
私は、城内を見渡しながら、言った。
城壁はあちこちで崩れ、補修している様子もない。
遠巻きに私達を見守る人々も、着るものは粗末で、皆が痩せ細っている。
……それに引き替え、この者らはどうか。
絹の着物に身を包み、酒や美食三昧故に全身が脂ぎっている。
「黄巾党の争乱と、飢饉がありましたからな。費えもなく、また命令もありませんでした」
「……わかった。城中には参るが、祝宴は不要だ」
「は?」
「稟、風。城内の文官を集め、現状の把握と戸籍の整理を」
「御意」
「了解ですー」
「この者らは、私の軍師。早速、協力せよ」
「は、はぁ……」
露骨に、不服の色を見せる郭図。
「これは、太守としての命だ。よいな?」
「……ははっ」
不承不承、二人を先導しながら城中へと向かっていった。
「なんだ、あの態度は!」
「落ち着け、愛紗。官吏など、あのようなものではないか」
いきり立つ愛紗を、星が宥める。
「本当に遺憾だが、星の申す通りだ……」
「月や、丁原のおっちゃんはそんな事なかったのだ」
「彼らや華琳、睡蓮らは例外であろう。それよりも星、愛紗、鈴々、お前達は、兵の取り纏めを。元々の兵の数や練度も把握しておかねばなるまい」
「はっ! お任せを」
「御意!」
「応なのだ」
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