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カーボンフェイス
プロローグ.2
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尽き、俺は半裸で地面にうつぶせで転がっている。死んでいない。俺はまだ生きている。顔面の痛みに表情をひきつらせようにも今ではそれもかなうまい、触らずとも俺の顔がどうなっているのかぐらい容易に想像がついた。もう人の顔ではないだろう、この路地裏でさえ異形だ。裏路地の闇医者アンガス・メリルでも手の施しようはない。普通ならとっくに絶命しているほどの重症だ、俺が焼いてきた連中がそうだったように。手の中に熱い感触を感じた、オイルライターだ。熱されてほのかに赤く色づいている。右手に鋭い痛みが走るが気にはならない。銃弾なら胸ポケットに入れとけば命でも助けてくれそうなもんだがこういう時には役に立たないな、そんなことを考えながら立ち上がるために腕に力を入れた。ベリベリと顔と地面がはがれる音がする。唇も燃えてしまったのだろう、歯が小石にぶつかりカチカチと鳴った。

 遠くから笑い声が聞こえる、下卑た笑い声だ反吐が出る。こいつらが俺を燃やしたのか?独断で?いや、ちがう。裏路地にも秩序がある。勝手な殺しは混乱の元だ。じゃあ誰の差し金で?

---------------------------------------------カーニバルだ。

あの女の差し金に決まっている。心当たりなら山ほどあるが誰が奴に漏らしたのか、誰が俺に直接手を下したのか、それが重要だ。必ずこのツケは払ってもらう、全員殺す。

 背後で音がした。ゆっくり振り向き慎重にあたりに目をやると、そこにいたのはホームレスだった。彼は怯えた風に両手で顔を隠して震えている。汚らしい風貌だ、この手の連中は裏路地では珍しくもないが、俺はこの男に覚えがあった。ほんの数分前だ、俺をこの裏路地に誘ったのは他でもないこの男だからな。

「ひ・・・俺は知らねェ!あんたがこんな・・・あぁ、ひどい顔だ!そんな顔でこっちを見ないでくれ!俺は関係ねェんだ!ただ、アンタをここに呼び出せば金をくれるって・・・よせよせやめてくれ!」
 
弱者に罪はない、この男もおそらくは本当に無関係なんだろう。きっとはした金を掴まされ、利用されたんだろう。俺は怯える男に近づき、ゆるりとした手つきで左手を男の肩に添える。ゆっくりとさすってやると、震えて緊張し、強張った男の身体がいくらか治まったかのように思えた。
右手でオイルライターを遊ばせ親指で蓋を鳴らす音を聞きながら、俺は男に聞いた。


「俺が今どんな顔してると思う?」


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