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至誠一貫
第一部
第三章 〜洛陽篇〜
三十三 〜出立前夜〜
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 孫堅の麾下、周泰であった。
 同時に、扉が勢いよく開かれた。
 そして、やはり大剣を構えた人物が、飛び込んでくる。
「おい、貴様ら。相手なら、私がなるぞ!」
 夏侯惇まで、何故此処に?
「歳三殿!」
「主!」
 そして、疾風と星までも。
「な、な、こ、此処を何処だと」
「……どうしようもない馬鹿の屋敷、かしら?」
「或いは、救いようのない阿呆の屋敷だな」
 悠然と、華琳と孫堅が扉の向こうから出てきた。
「か、華琳さんに孫堅さん?」
 華琳は、そんな袁紹を冷たく見据えた。
「麗羽。貴女が馬鹿なのは今に始まった事ではないわ。……でもね、この歳三に手を出すのなら、私も容赦はしないわ」
「俺も同じく、だ。我が娘らの婿となるべき男。貴様如きにやらせはせん」
 ……何やら、聞き捨てならない言葉も混じっているが。
「あ、あなた達! この私に対してこのような真似、か、覚悟は出来ているのでしょうね?」
「ええ。どうとでもなさい。……尤も、黙ってやられる私かどうかは、麗羽が良く知っていると思うけど?」
「ほう。この俺と、遣り合うつもりか? 喧嘩はな、相手が強けりゃ強いほど、燃える質だぜ?」
「……袁紹殿。これ以上の諍い、無用にござろう。それでもなお、拙者を止めるおつもりならば」
「この趙子龍、この槍にかけて主をお守り致す」
「徐公明も、この戦斧が黙ってはおらぬ」
「う、うう……」
 袁紹ら三人は、気圧されたように後退る。
「歳三。もう、麗羽は用がないみたいよ? 行くわよ、春蘭」
「うむ、引き上げようぞ。明命、もうよい」
 呆然とする袁紹らを余所目に、私はその場を後にする。


 宿舎に戻る、道すがら。
 私は、皆に礼を述べた。
「忝い。まさか、あのような事になろうとは」
「丁度、貴方を訪ねたら、麗羽に呼び出された、って聞かされたのよ」
「袁紹の事だ、また馬鹿な事を言い出したのだろう、とな。それで、曹操と二人、駆けつけたのだよ」
 どうやら、袁紹は元々あのような人物らしい。
「主。何故、我らをお連れにならなかったのですか?」
「星の申す通りです。如何に洛中とは申せ、不用心過ぎまする」
「……済まぬ」
 申し開きようもない。
 確かに、私の判断が甘かったのだからな。
「では土方。朝まで付き合って貰うからな?」
「そうね。借りを返して貰うにはちょっと不足だけれど」
 ……ほぼ間違いなく、酒であろうな。
「うむ、良いですな。主の無事を祝して、私も同席致しますぞ?」
「そうだな。歳三殿、お覚悟めされよ?」
「……相わかった」

 結局、風と稟、更には孫策に黄蓋、劉曄まで加わり、本当に朝まで大騒ぎと相成った。
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