第一部
第三章 〜洛陽篇〜
三十三 〜出立前夜〜
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ば」
「その力、存分に活かしてみる気はございませんこと?」
「率爾ながら、仰せの事、見当がつきませぬが」
「ですから。この名家、袁本初の財力と権力、それにあなたの力が合わされば、より三国一の実力になる。そうは思いませんこと?」
「……合力、というご提案でござるか?」
「ちょーっと違いますわ。斗詩さん、猪々子さん。あれをお持ちになって」
「はい、麗羽様」
「姫、あれごとですか?」
それまで、黙って控えていた二人が、その声に弾かれたように動き出した。
「そうですわ。早くなさい」
「へ〜い」
……文醜、主命だと言うのに恐ろしく気さくに答えている。
袁紹が怒らないところを見ると、普段からこの調子なのだろう。
尤も、私のような他人を交えた中でのやりとりとしては、些か不適切だが。
そして、二人は何やら車を引いて、戻ってきたようだ。
……金塊を、山と積んだ車を引き連れて。
「これは、ほんの支度金ですわ」
「支度金、でござるか?」
「そうですわ。これで、この三国一の名家たる袁本初のため、力を貸して貰いたい、そういう訳ですわ」
「……つまり、この金で拙者に、臣下の礼を取れ、そう仰せなのですな?」
「その通りですわ。不足ならば、この倍差し上げても宜しくてよ?」
途方もないものだな、袁紹の財力とは。
恐らくは純金、その価値は相当なものだろう。
「そうすれば、あなたも、あなたに従う者も、全て栄華が約束されますわ。何と言っても、この華麗なる私の下ですからね、お〜っほっほっほ」
……何処をどう解釈すれば、そのような結論に至るのか。
私だけか、と思ったが、顔良の微妙な表情が、そうでない事を物語っていた。
「袁紹殿」
「あら、何でしょう?」
「……一つ、伺いたい事がござる」
「いいですわ。何なりと」
「貴殿の目指すところ、それをお聞かせ願いたいのです」
「はぁ?」
袁紹にとっては、想定外の問いだったのか。
「この場の事、決して他言は致しませぬ。率直に、お答えいただきたい」
「簡単な事ですわ。別に、隠し立てする事でもありませんもの」
「ほう、それは?」
再び、袁紹は胸を張る。
「この三国一の名家、袁家に相応しき身分になる事ですわ。即ち、目指すは三公。それ以外に何がありまして?」
「…………」
些か、頭痛がする。
今の漢王朝を見て、何も感じぬのであろうか?
「……つまり、袁紹殿は、己の立身出世をお望みか?」
「当然ですわ。それが、この名家に生まれた私の務めですわ」
微塵も、揺るぎのない答え。
……だが、それは、私が望むものとは到底、かけ離れていた。
「今一つ、伺いたい」
「あら、まだありますの?」
「袁紹殿と拙者は、官位こそ大きな隔たりがありますが、共に、陛下にお仕えす
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