第一部
第三章 〜洛陽篇〜
三十三 〜出立前夜〜
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「此方です」
なるほど、三公を四代に渡り輩出した名門、袁家の屋敷だけの事はある。
巨大な屋敷にも何処となく、風格が漂う。
「斗詩。連れてきたか?」
門の中に、誰かが立っていた。
「もう、文ちゃん。お客様に失礼だよ?」
「へぇ、この人が、噂の兄ちゃんか」
顔良と同じぐらいの年格好で、背に大剣を背負っている女子。
私に近づくと、無遠慮に顔を覗き込んできた。
「何方かは存ぜぬが、少々、無礼ではないか?」
「おっと、悪い悪い。あたいは文醜ってんだ、宜しくな」
袁紹麾下の、もう一人の勇将か。
身のこなしからして、確かに顔良よりも腕は立ちそうだ。
……その分、顔良ほどの分別はないようだが。
「……土方と申す。顔良殿、これも、袁紹殿の指示にござるか?」
「い、いいえ! 文ちゃん、麗羽様は?」
「ん〜? 姫なら、さっき部屋で髪の手入れをさせていたっけ。まだ、そこにいるんじゃないかな?」
「わかった。……では土方様、此方へ」
文醜も、共についてくるつもりらしい。
あまり、気にせぬ方が良いな。
「麗羽様。土方様をお連れしました」
「どうぞ、お入りになって」
通された部屋は、かなりの広さであった。
その中央に、女子が一人、尊大な態度で座っていた。
長い金髪を巻き、見るからに豪奢な出で立ち。
髪型だけならば、華琳に通じるものがあるが。
「お〜っほっほ、ようこそ。私が三国一の名家、袁本初ですわ」
「お招きに預かり、参上仕りました。拙者は土方歳三と申しまする」
「あなたが、最近名を上げている土方さんですのね。まぁ、私には及びませんでしょうけど、お〜っほっほっほ」
ふむ、この態度、生まれた家柄から来る自負か。
しかし、初対面の私に対してもこれだけ尊大に構えるとは、な。
……残念だが、華琳と容姿の共通こそあれど、器は比較にならぬようだな。
「して、このような時分にどのようなご用件でござるか?」
「あ〜ら、そうでしたわね。土方さん、あなた、魏郡太守に任じられたと聞きましたわ」
「はい。陛下より、ご沙汰を賜りまして」
「実は、私も過日、陛下より新たなご沙汰をいただきましたのよ?」
袁紹は得意げに胸を張り、
「渤海郡の太守、ですわ」
「それは、祝着至極にござります」
「ありがとうございます。ですが、そんな役如き、この袁家にはまだまだ似つかわしくありませんわ。これを足がかりに、もっともっと上を目指しますの」
……陛下から賜りし役を、そんな呼ばわりで良いのだろうか。
聞く者が聞けば、不遜の極みであるのだが。
「そこで、是非ともあなたに、魅力的な提案をと思ったのですわ」
「伺いましょう」
「あなた、随分と実戦に強いようですわね?」
「……些か、自信がござれ
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