第九章 双月の舞踏会
第九話 伸ばされる手
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った。
どうして―――と、タバサは思う。
何故、矢を放つという姿にこうまで見蕩れてしまうのだろうか―――と。
竜の背に立ち。
月光の下、氷の矢を放つその姿は、まるで完成された絵画のようで。
「―――きれい」
士郎が放った矢は、まるで何かに導かれるかのようにガーゴイルに向かい、その頭部を砕く。
一秒毎に一体ガーゴイルは地に落ち。
そして今、ガーゴイルの群れが接敵する筈の時間。
空を飛ぶガーゴイルは……。
「……しんじられない」
ルイズを背に載せた巨大なガーゴイルだけであった。
零れ落ちたように、タバサの口から言葉が漏れる。
五十四の氷の矢を放ち終えた士郎が弓を下ろした瞬間、タバサの口からポツリと溢れた言葉は、誰の耳に入ることなく風の音に混じって消えていった。
「随分と距離を稼がれてしまったな」
ガーゴイルの群れを落としたきったが、その間に巨大なガーゴイルは距離を稼ぎ、士郎の言葉通り追跡を始めた頃と同じ、その姿は豆粒大の大きさになっている。
超人的な技量を示したと言うにも関わらず、士郎はそれに対し何ら述べることなく、ただルイズを背負うガーゴイルの姿を注視していた。
「……間に合うか」
士郎の中に焦りが募る。
今はまだ、ルイズは速度の遅いガーゴイルの背にいるが、もし何か別の、シルフィードよりも速度の早い何かに乗せられれでもしたら、追いつくことは不可能になってしまう。
まだガーゴイルでいる間に、どうしても追いつかなければならない。
それに、体力の関係もある。
背に負った傷によるダメージは深く、士郎であってもそろそろ限界が近かった。
迫るタイムミリットに、士郎の顔が険しくなった時、
「なっ!?」
驚愕の声が漏れた。
遥か遠く、ガーゴイルの進路を防ぐかのように、その進路方向に雲海からまるで潜水艦のように現れたそれは、目測で百五十メイルはあるだろう。何とか進路を防ぐそれをかわそうとするガーゴイルの動きから、どうやら敵ではないようだが、では一体何なのだと士郎の思考が目まぐるしく回る中、シルフィードは距離を詰める。
そして、士郎の耳はその声を捕らえた。
「シロウくんっ! 私が足止めしているうちに早くミス・ヴァリエールをっ!」
懐かしいその声に、士郎は思わずその名を叫ぶ。
「コルベール先生ッ!?」
ゲルマニアにいる筈のコルベールの声。
ガーゴイルと、謎の巨大な影とシルフィードの距離が詰まり、士郎の視界にその詳細が映る。
まず始めに、音が聞こえた。夜空に巨大な何かが動く音と共に、蒸気が発する音も同時に響く。
次に、その姿。差し渡し百五十メイルはあるだろう巨大な翼の後ろに、巨大なプロペラが回
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