第11話 耳元で甘く囁くのは魔物だそうですよ?
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沸き立つ陽の気が、月の巫女たる美月に因って鎮められる。
これもまた魂鎮めの舞い。
「ひふみよいなむやここのたり、ふるべゆらゆらゆらゆらと……」
美しい物には神が宿る。
今の美月には間違いなく、神が宿っていた。
刹那。世界が変わった。
何処がどう変わったのか、言葉に表す事は出来ない。
但し、雰囲気が変わった。
今まで、不気味にざわめくだけで有った森の木々が、春の夜に相応しい花の香りを伝え、
背筋に冷たい物を這わし、禍々しき気と死と絶望を感じさせずには居られなかった深き闇が、夜の安らぎを感じさせる。
そう。正に、生命を感じさせる雰囲気を森自体が発し始めたのだ。
しゃらん……。
最後に大きく跳躍を行い、強く大地を踏みしめ、
しゃらん……。
強く、鈴の音が鳴り響いた。
そして……。
☆★☆★☆
鳥の声が聞こえる。
甲高い、そして、とても綺麗な声。
あぁ、あれはホトトギスの声だ……。
ぼんやりと、そう感じた美月がゆっくりと瞳を開く。
最初に目に映ったのは緑に切り取られた黎明の蒼穹。刻一刻と移り変わる紫色の蒼穹が其処には広がって居る。
何時の間に倒れたのか定かでは有りませんが、この死の森から生命の息吹を感じたトコロで意識を失ったと思うので……。
「ようやく気が付いたわね」
何故か異様に近い位置。更に自らの頭の真上から、破壊神の少女の声が響く。
驚いた美月が、そちらの方に視線を向けようとしたその瞬間!
「!」
急に支えを失い、後頭部を大地に打ちつける美月。目から火花が飛び散り、
「いた〜い!」
後頭部に手を当て、恨み言に等しい台詞を口にする。
但し、その口調ほどに痛かった訳では無い。何故ならば、美月が後頭部を打ちつけたのは、柔らかい腐葉土に覆われた大地。まして、この泉の周囲は破壊神の少女を慕う妖樹たちが動き回って居たので、彼らの根によって綺麗に手入れをされた畑のような状況ですから……。
「何時まであたしの膝枕で寝ている心算なのよ」
立ち上がってから、自らの事を涙目で見つめる美月に対して、やや冷たい口調でそう話し掛ける破壊神の少女。
しかし……。
確かに口調や現在の態度は冷たい。しかし、アストラル体が肉体から離れて、完全に意識を失った美月の身体が倒れ込むのを受け止めてくれたのも彼女だったのは間違いない。
何故ならば、美月のアストラル体が身体を離れる直前に彼女の背後に存在して居たのは、今、不機嫌そうな雰囲気で美月を見つめて居るこの少女。そして、目を覚ました時に傍に居たのも彼女ですから。
そんな、多分、非常に素直じゃない破壊神の少女に対して、後頭部をさす
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