第11話 耳元で甘く囁くのは魔物だそうですよ?
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が扱える訳はない。これは上級の仙人が操るべき領域の術式。
今、ここに存在して居る龍脈を完全に浄化して、悪しき気の流れと成って居る個所を、すべて正常な陰陽のバランスへと改善する調律を行う作業。
しかし……。
「本当に使えないわね」
そう言いながら、巨大な霊力の流れに意識を持って行かれそうに成って居る美月の背後に立つ、破壊神の少女。
そして、
「ほら、手伝って上げるから、半分、こっちに寄越しなさい」
その瞬間、美月の意識が飛んだ。
いや、意識を失ったと言う意味ではなく、文字通り、遙か上空からこの死の森を見つめて居る眼を持ったと言う事。
その中で、遙か北の山脈からこの森を突っ切り、美月の住む村に流れる龍脈の存在も感じ取る事が出来る。
そして……。
そして、その中に存在する微妙な違和感。歪みのような物についても、今でははっきりと感じる事が出来た。
【あんたがちゃんとしないで、どうするって言うのよ】
かなり不機嫌な雰囲気で、破壊神の少女の【心の声】が聞こえて来る。
今、この場に彼女はいない。しかし、直ぐ傍に居る。
それは感じられた。
太古の森を足元に感じ、蒼き光を放つ女神の御許に相応しい声と、静寂に包まれた世界に相応しくない騒々しい雰囲気で。
そう。この術式は、美月を中心にして為される術式。故に、彼女が為さねばならない役割は大きい。
足元の死の森では、それぞれの方角の龍穴より立ち昇った龍の気が、悪しき気を祓い、陽の気で周囲を満たして行く。
但し、それでは問題が有る。それでは、今は陰気に沈んだ森が、陽の気が過多と成った森へと変質するだけ。
世界に与える状況の悪さは変わる事はない。
何もない宙空で、アストラル体と成った美月が足を強く踏み切る。
その踏切に続く、微かな鈴の音色。
大地を強く踏みしめるのは、大地から沸き立つ気を鎮める為。
「ふるべゆらゆらゆらゆらと……」
大地を軽く蹴り、
軽やかに降り立ち、その場で右に旋回。
翻った衣の先。白く映える足袋のつま先まで、美月の魂が籠められ、凛とした神々しいまでの気が漂う。
そして……。
しゃらん……。
巫女装束の袂が、長い金髪が蒼い光の中で翻る度に、微かに響く鈴の音色。
「ふるべゆらゆらゆらゆらと……」
鈴の音色。蒼い月の光り。神楽舞い。
そして、月下にこそ相応しい美月の声。
そう。名前に月の加護を得た彼女は、正に月の巫女。
アストラル体に成っても尚、ゆとりのある巫女装束姿の美月。
その軽やかな舞いに重なる鈴の響き。
微かな花の香りを纏い、袖を緩やかに翻し、紅き袴がふわりと舞う。
大地より
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