第11話 耳元で甘く囁くのは魔物だそうですよ?
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、微かな、単調なる笛の調べ。
そう。今の自分ならば可能。
あの日のあの場所。
子供も、大人も、老人も、若者も、男も、女も関係なく、大量の死者と死臭が積み重なって出来たあの時間に……。
何処かから差し出して来る手をリューヴェルトは――――
「あたしの言う方向に、あたしが言うタイミングで矢を放つ。
あんたは、何も余計な事を考える必要はないから」
何故か彼女に相応しい命令口調で、そう言って来る破壊神の少女。
彼女が指し示す方向は西。緑の天蓋から覗く星空に向かい、弓の狙いを定めさせられる美月。
彼女。破壊神の少女の言う意味は、はっきり言うと今の美月には判らなかった。
彼女の真意を測る……言葉の意味を掴む為に、彼女の事を腰に手を当てた状態で、睨み付ける破壊神の少女の姿をもう一度、しっかりと見つめる美月。
しかし……。
しかし、矢張り意味不明の台詞。更に、破壊神の少女の発する言葉が上から目線の、その上で命令口調と言う部分が気分的には少し反発心を覚えないでもない。
但し……。
最初に否定の言葉を思い浮かべてから、微かに首を横に振る美月。
その仕草に重なる微かな鈴の音。
そう。美月の事は兎も角、少なくとも彼女がハクちゃんを裏切る事は無い。それだけは何故か確実に断言出来る。
そう、美月は考えたのだ。
何故か、彼女の首から下げられている十字架を象った銀の首飾りと、今、この場で自分の支えと成りつつある小さな鈴が、同じ種類の物で有るような気がするから。
そんな、ただの思い込みに等しい微かな何かを、今の自分と、この目の前の神と呼ばれる少女から感じる事が出来たから……。
彼女の事は信用出来る。
弓を手に大きく息を吐く美月。
静かに瞳を閉じ、月の光りと上空から吹き込んで来る風を金の髪の毛に感じる。
風が、微かに木々の葉を揺らし、
美月の金の髪を撫で、微かな鈴の音を耳に届けた。
そして、再び碧の瞳が開かれた時には――――
既に、神を纏う巫女の顔をしていた。
破壊神の少女から、少し息を呑む音が聞こえる。
そう。無駄に力の入った個所は感じられず、巫女姿で蒼い光の下にすぅっと立つその姿は一個の芸術品を思わせる姿。全長にして二メートル以上の黒塗りの弓を手にしたまま、蒼穹を見つめるその横顔は、昏い蒼穹に浮かぶ女神の如し。
刹那。
美月の腕が弓……桃の木製の弓を頭の高さまで打ち起こし、
ゆっくりと引き絞られる弓の反りと、そして、弦の張りが、上空から蒼き光の矢を放つ美しき女神のそれと重なって行く。
徐々に高まって行く美月の霊気に呼応するかのように、昏い世界の中で彼女の姿自身が強烈な光を放ち
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