暁 〜小説投稿サイト〜
私は何処から来て、何処に向かうのでしょうか?
第11話 耳元で甘く囁くのは魔物だそうですよ?
[4/10]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
お守りとも成って居るのは事実です。

 但し、そんなお気楽極楽な答えの向こう側で、この目の前の破壊神の少女が何故、自分の事。美月が弓を引く事を知って居るのかを訝しく思いながら。

「あんたって、本っ当に昔っから使えないわね」

 またもや妙な事を言い出す破壊神の少女。これでは、ハクだけではなく、美月の事も同じように知って居る……。それも、美月自身にまったく覚えがない以上、美月の前世に何らかの関係が有るかのような気配の台詞なのですが……。

 しかし、当の破壊神の少女は、かなり訝しく破壊神の少女の事を見つめる美月の表情には一切気付く事もなく、

「だったらコレを使いなさい」

 そう言いながら、何処から取り出して来たのか判らない、行き成り何もない空中から取り出して来たかのような長弓を、美月に対して差し出して来た。
 相も変わらぬ唯我独尊。世界は自分を中心に回っている、と言う雰囲気のままで。
 鼻先に突き出されて来たその弓を、少し呆気に取られたかのような雰囲気で、寄り目に成りながらも確認を行う美月。

 その弓は……。別にごてごてとした装飾が施されている訳でもない、ごく普通の長弓。木材と竹を組み合わせた物を膠で接着し、補強のために藤を巻き付けてあるタイプの弓。
 所謂、上方と下方を赤い漆によって塗られた重藤の弓と言われるタイプの和弓。普段、美月が使っている弓と同じ程度の大きさの弓で有る事には間違い有りませんでした。

「ほら、忙しいんだから、さっさと受け取りなさい!」

 そう言いながら、再び、鼻先に突き出されて来たその弓を、勢いに負けた美月が受け取る。
 しかし、勢いに負けて無理矢理受け取らされた割には……。

「上下のバランスも良い感じだし、手にも馴染む。結構、良い弓よね、これ」

 軽く両足を開き、弓を立て、ゆっくりと押し広げて行くかのように弓を下ろして行き――
 指が弦を放した。

 その瞬間、清々しい音が響き渡り、それだけで、周囲に漂っていた陰の気が一気に浄化されて仕舞う。
 そう。それこそが鳴弦と呼ばれる術。古来より伝わる魑魅魍魎を射抜くと言われている清らかなる音。
 間違いない。この弓は、見た目は普通の重藤の弓ですが、何らかの神の加護が宿った弓と言う事なのでしょう。

 与えてくれた少女から推測すると、破壊神か、それとも創造神。
 もしくは、何らかの大地母神の加護が……。

 その音を聞いて、何故か満足気に首肯く破壊神の少女。その時の美月の視線が、見た目の年齢の割には美月よりも豊かな一部分に注がれて居た事については気付く事もなく。
 そう。大地母神にありがちな設定の箇所に。
 そして――――



 がしゃがしゃがしゃがしゃ――――

 何モノかが背後の森より近
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ