第11話 耳元で甘く囁くのは魔物だそうですよ?
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は、何か心の奥底に強い望みは有りませんか?」
バンダナの青年が、涼しげな瞳でリューヴェルトの青い瞳を覗き込むようにしながら、そう囁き続ける。
その笑みとも、それ以外とも言える奇妙な色を瞳に宿して……。
「貴方は一体……」
次の言葉を口にしようとして、言葉が出て来なく成って居る事に慄然とするリューヴェルト。
そう。敵意すら発しようとしないこの目の前の青年から、今の彼が感じて居るのは恐怖。底の見えない闇の奥深くを覗き込んだ時に感じるような、生物が本能的に死を恐れるような、そんな恐怖心。
「僕の事ですか?」
青年が、その蠱惑に満ちた声が耳元で響く。この声に耳を貸すのはあまりにも危険だ。
そう、リューヴェルトの心の何処かで警告を鳴らし続けている存在は居る。しかし、現在の彼は、何故かこの青年の発する声を拒絶する事が出来ない。
がしゃがしゃがしゃがしゃ――――
「僕は色々な名前で呼ばれて来ましたよ」
まるで、歌うような軽やかな音色で青年はそう答えた。
色々な名前。その具体的な内容を目の前の青年が口にしているはずなのに、何故か曖昧な認識しか持ち得ない今のリューヴェルト。
ただ、目の前のバンダナの青年に視線を釘付けにされ、
自らの背後から近寄りつつ有る、何か巨大なモノの気配を感じるだけで有った。
「愛用の弓?」
確かに美月は弓を引く。でも、その事を何故、この目の前の破壊神の少女は知って居るのか。
一瞬、訝しくそう思った美月ですが、しかし、その事を表情や態度で示す前に、この破壊神の少女が最初に妙な事を言って居た事を思い出した。
そう。美月の事も何処かで見た事が有ると……。もっとも、確かに、かなり幼い頃にこの森で遊んだ記憶が有りますが、果たして、この森の周辺で弓の鍛錬をした記憶が有るかと言われると、微妙な記憶しかないのですが。
ただ、それでも、
「今日は持って来てないわよ」
……と、あっさりとそう答える美月。
そして、
「そもそもあたしの弓って、術の精神集中を増す為に学んだ物なんだから、始終持ち歩く物ではないんだよね」
……と両手を天に向けて、やや肩をすくめるような素振りを見せながら続けた。
その仕草に重なる妙なる鈴の音色。
その音色の正体。それは、普段はハクの巫女服や髪の毛などを飾る鈴の内の幾つかを、美月用に残して行ってくれたのだ。
当然、この鈴は破邪の力の籠められた鈴。この鈴を身に付け、微かな音を響かせ続ける事に因って、邪気が近付く事を封じる。そう言う意味を持つ護符。
ただ、美月に取っては、彼女を傍に感じる事に因って不思議な安心感を得られる相手からお守りとして残していって貰った物だけに、別の意味を持つ
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