第11話 耳元で甘く囁くのは魔物だそうですよ?
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ですから……。
しかし、そのリューヴェルトの問い掛けに首を横に振る青年。
そうして、
「あの御老人との直接の面識は有りませんし、僕が彼の主催するゲームに参加する事は許されないと思いますよ」
「ハクちゃんが前世では男の子だった……」
美月が我知らず、独り言のように呟く。
確かに、前世が必ず現世と同じ性別で有るとは限りません。まして、必ずヒューマノイド・タイプの生命体で有るとも限りませんから。
何故ならば、美月の親友と言うべき相手は白猫の姿形をしていて、更に人語を解し、その上、魔法も行使しますから。
このような実例が身近に居る以上、前世のハクが必ずしも人間として転生して居るとは限らないでしょう。
ただ……。
ただ、その部分に何か引っ掛かりが有るのも事実。
何が引っ掛かっているのか、現在の美月には判らなかったのですが。
「ねぇ」
黙りこくって、破壊神の少女をその碧い瞳に映しながらも、その実、何処も見ている事もなく、ぼんやりと考え込んでいた美月に対して話し掛けて来る破壊神の少女。
その視線は、相変わらず喧嘩を売って来ているのかと錯覚させるほどキツイ雰囲気。
……いや、違う。最初に彼女の瞳を覗き込んだ時は、確かにキツイ雰囲気の中に優しさのような物を美月は感じていた。
しかし、今の彼女から感じるのは……。
警戒。敵意。いや、流石に其処まで強くはない。そう考えて、美月は少し首を横に振る。
そう。ハクがやって来てから、何故かどんどんと鋭敏と成って行く感覚で美月はそのように感じて居たのだ。
ならば、今、彼女。破壊神の少女が発して居る感情は……。
――不機嫌。不満。これがこの少女が何時も感じて居た。強く感じて居た感情の正体。
確か、伝説に残されている内容にも、似たような部分は有った。
彼女は、自分自身の事をとても小さな存在だと感じて居た、と……。
ぼんやりと自らの事を見つめ続けて居る美月を、何やら値踏みするように見つめた破壊神の少女。
そして、不機嫌そうに腕を胸の前で組み、
「あんた、何時も持って居た弓は何処に置いて来たのよ?」
……と、問い掛けて来たのでした。
がしゃがしゃがしゃがしゃ――――
「そんな事よりも――」
闇の向こう側から響いて来る、額にバンダナを巻いた青年の囁き声。
ただ、その声は五メートルほど前方の、この花の咲き乱れる龍穴の入り口辺りから発した囁き声で有ったはずなのに、何故か、リューヴェルトの耳元で発せられた声の如く聞こえ、
そして、甘く甘く、心の奥底をしびれさせるような、そんな声で有った。
がしゃがしゃがしゃがしゃ――――
「リューヴェルトさん。貴方
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