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私は何処から来て、何処に向かうのでしょうか?
第11話 耳元で甘く囁くのは魔物だそうですよ?
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「おや、もう到着なさって居たのですか」

 突如背後から掛けられた声に、少し驚きながら振り返るリューヴェルト。すると、其処……彼が辿って来た緑のトンネルの入り口辺り。深い闇の向こう側からゆっくりと、月光に照らされた花の支配する場所に向かって歩を進めて来る、バンダナで額を隠した東洋人の青年が存在していた。
 年齢は十代後半から二十代前半と言う程度。見た目から判断すると、未だ少年の残り香を感じさせる青年と言う雰囲気。
 いや、リューヴェルト自身には直接の面識が有る相手では有りません。……が、しかし、美月やタマがこの場に居たのなら、声を上げたのは間違いない相手。

 そう。既に一昨日の出来事と成った、黄泉比良坂内で繰り広げられたギフトゲームの最初の部分に登場し、黄泉と現実界の境界線をこじ開けたイケメン青年の姿が其処に現れて居たのですから。

「すみません。どうにも抜けられない用事と言う物が有りまして、少しお待たせする格好になって仕舞いましたね」

 何故か、心の籠って居ない上っ面な謝罪を口にしながら一歩、また一歩と足を進め、死が渦巻く森と花が咲き乱れる地点との境界線上に立ち止まるバンダナの青年。
 古代の王の如き、誇らしき堂々とした雰囲気に長身痩躯の姿。この死の森と呼ばれる危険な森の中を泰然自若と言った雰囲気で歩み続ける様子から考えても、この目の前の青年が只者でない事は簡単に見て取れる。

 そして、

「初めましてリューヴェルトさん」

 距離にして五メートルぐらい向こう側から話し掛けて来る青年。
 穏やかな口調。更に、東洋人的な笑みを浮かべて。
 敵意を感じさせる事はない相手で有る事は間違いない。しかし、この死の森の中を無事に動き回って居る以上、普通の人間とも思えない相手。

 ならば、この新たに現れた青年の正体として考えられるのは……。

「貴方もこのギフトゲームの参加者なのですか?」

 取り敢えず、森に存在する(あやかし)の類で有る可能性も考慮しながら、そう問い掛けるリューヴェルト。
 故に、彼我の距離の五メートルは堅持。更に、不意打ちなどに対して警戒を怠りなく行うように、頭の隅に置いておきながら。

 但し、もし、この新たに現れた青年が敵。それも、この森に棲む妖物が人間の姿を偽って現れた存在だった場合は、このギフトゲームの勝利条件に因って、ウカツな攻撃は行う事が出来なく成るのは間違いない。

 何故ならば、このギフトゲームの勝利条件は、森に棲む生物の命を奪い過ぎない事。そして、もし、このゲームのクリアに失敗すると、リューヴェルトの住むコミュニティに関しては今の所問題は有りませんが、美月たちが住むコミュニティは、徐々に広がりつつ有るこの森に、そう遠くない未来に呑み込まれる可能性が大だと言う話
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