第二部 文化祭
第13話 朝露の少女
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ウンディーネの少女としてアルヴヘイムに降り立ったアスナは、迷わずキリトの姿を捜した。
あの少女が一緒にこの世界に来れているか否かは判らない。けど、和人に触れられながらの転移だったので、無事来れている可能性もゼロではないはずだ。
「……アスナ!」
後ろ側から、キリトの声がした。
アスナは勢いよく振り向く。キリトの隣には、先ほどの少女が立っていた。
「あれっ……目、覚めたんだ」
少女は小首を傾げると、「誰?」といった表情を浮かべた。アスナは少女に視線を合わせるようにしゃがみ、にっこり微笑む。
「わたしはアスナ。はじめまして」
「……あうな?」
少女の声は鈴の音のように美しく、しかしどこかあどけなく聞こえた。
「……ユイにはちょっと難しいよな」
「うん……」
キリトの言葉に、少女はこくりと頷く。
「ユイ……? あなた、ユイちゃんっていうの?」
「うん」
アスナの問いに、少女──ユイは再び頷きながら答えた。
──なにか、おかしい。
「ねえ……キリト君」
「どうした?」
「おかしいと思わない?」
「え、なにが?」
「この子、何歳くらいに見える?」
キリトがユイを見やる。
「……9歳くらいだな」
「そんな小さな子が、あんなところに1人でいただなんて……やっぱりおかしいわ」
「そうだな……」
「それに、話す言葉はまるで、9歳というより……」
──赤ん坊のようだ。
アスナはあえて最後までは口にしなかった。
そして、ユイに問う。
「……ね、ユイちゃん。あなたの家族の居場所とか……わからない?」
「……かぞく?」
ユイは小さく首を振る。キリトは心痛な表情になった。
「キリト君……」
「……記憶喪失、とかいうやつだろうな……」
アスナはきゅっと奥歯を噛みしめた。
まだ幼い女の子が、記憶もなしにあんな場所で──。
「キリト君……この子の親が見つかるまで……」
「ああ、俺たちが面倒を見よう」
「……うん」
アスナはこくりと頷いた。
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