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至誠一貫
第一部
第三章 〜洛陽篇〜
三十二 〜参内〜
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、二人の姉妹……。
「歳三様。……まさか」
 稟も、気付いたのだろう。
「率爾ながら。……弁皇子と協皇子とお見受け致す」
 ビクッと、二人は雷に打たれたかのように身体を震わせた。
「ご安心めされよ。拙者、姓は土方、名は歳三と申しまする」
「土方……変わった名よの」
 堂々としている方が、恐らくは協皇子か。
 一方、どことなく怯えた色を見せているのが、弁皇子であろう。
 二人とも、女子であるのに皇子、というのもおかしなものだが……それは問うまい。
「この者達は、郭嘉に趙雲。二人とも、拙者の麾下にござれば、ご懸念めさるな」
「……その方ら、何処の者か?」
 協皇子は、未だ警戒の色を隠そうともしない。
「官職はござらぬ。本日、陛下よりご沙汰をいただくべく、こうして罷り越した次第にござります」
「そう言えば、張譲や趙忠らが、何やら話していたような」
「姉様! 素性も知れぬ者の前で、迂闊ですぞ」
「で、でも……。この者達、私達を匿ってくれたではないか」
 そう言って、弁皇子は上目遣いに私を見る。

「主。人がやって来ますぞ」
 星の声に、部屋の中に緊張が走る。
「先ほどの女官か?」
「いえ。……ただならぬ気配を感じます」
「先ず、先ほどの衝立の陰にお入り下され。追われているのでござりましょう?」
「う、うむ……」
「杜若、見つかったらどうしよう……」
「菖姉様、泣いている場合ではありませぬぞ。さ、早く」
 二人が隠れると程なく、足音が近づいてきた。
 そして、顔を覗かせた。
「あら? 歳三じゃない」
「……華琳か」
「曹操じゃと?」
 協皇子が、衝立から出てきた。
 華琳は、私と違い、歴とした官職を持つ身。
 此処にいるのは、確かに不思議ではないな。
「此方でしたか。女官頭が、必死に探していますよ?」
「放っておくがよい。私は、姉様と遊びたいだけじゃ」
 ふむ、皆、知己のようだな。
 安心した様子で、弁皇子も姿を見せた。
「ふふ、後でどうなっても知りませんよ?……ところで歳三、どうして貴方が此処に?」
「陛下より、ご沙汰を下さるとの事。それで、此処で待っておるところだ」
「そう。何進大将軍も、貴方の事は何度も陛下に申し上げたとの事だし。期待している事ね」
「……曹操。この男と、知り合いなのか?」
 と、協皇子。
「ええ。この者は、信頼に足る事、この私が保証します。ご安心下さい」
「そ、そうか……。曹操がそう申すなら間違いないの」
「杜若。それより、早く遊びに行こうよ」
「そうですな、菖姉様。ではな、曹操。……それから、土方」
「は」
「先ほどは、匿ってくれた事、感謝するぞ。それと、疑って済まぬ」
「いえ、お気になさらず」
「うむ」
 両皇子は、手を取り合い、何処かに
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