第一部
第三章 〜洛陽篇〜
三十二 〜参内〜
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の貴重なお時間を賜るのだ、良いな?」
「はっ!」
使者は頷くと、踵を返した。
「お疲れ様です、お兄さん」
別室で待っていた皆が、使者が宿舎を去った後で再び、集まった。
「うむ」
そして、使者の口上をそのまま、皆に伝えた。
「供は、星と稟とする」
「むー。何故、風を連れて行っていただけないのでしょうか?」
「私もです」
風と疾風、案の定不服の顔をする。
「万が一を考えての事だ。お前達は夏ツの事を調べた、それが当人の耳に達していては、何かと面倒な事になる。無論、お前達がそのようなしくじりを犯したとは思わぬが」
「相手が相手ですからね。慎重を期した方がいいのは確かでしょう」
「それに、疾風も何進殿の手配りがあったとは言え、難癖をつけられる可能性もありますからな」
「稟と星の申す通りだ。今はまだ我らには何の力もないのだ。それに、二人には頼みがある」
その刹那、二人は表情を引き締めた。
……尤も、風はいつも通り、眠たげな顔のままであったが。
そして、翌朝。
指定された刻限に合わせて、宮城の門へと向かう。
「止まれ!」
衛兵が、槍を構える。
「拙者、土方歳三。陛下より、登城せよとのお達しにより、参上仕った」
そして、割り符を衛兵に手渡す。
「暫し、待たれよ」
衛兵は割り符を持ち、門の中に入っていく。
そして、割り符の片割れを持ち、私に示した。
「よし、入られよ」
「忝い」
衛兵に続き、私、星、稟の順で門を潜った。
行く手には、壮大な宮殿がそびえていて、そこまでの道は全て、磨かれた石である。
皆、無言でひたすら歩く。
私語を慎まねばならぬのは無論だが、それよりも宮城の規模に圧倒されているようだ。
広さもそうだが、石細工の装飾一つ取っても、相当な価値があるのだろう。
庭木も手入れが行き届き、塵一つ落ちている様子もない。
……日本の御所とは、大違いだな。
京に赴いた初めの頃など、そのあまりの荒廃ぶりに驚いたものだ。
塀は破れ、門は傾き、権威とは名ばかりの見窄らしい有様。
……だが、此処は少なくとも、困窮という言葉は相応しくない景観だ。
権力を握っているか否か、その差は歴然としているという事か。
次の門を抜け、いよいよ建物の中へ。
すれ違う官吏が、チラチラと私の顔を見ていく。
「ほほぉ、あれが噂の」
「確かに、美男ね」
「ちょっと、いいかも」
時折、そんな声も聞こえる。
……どうも、思いの外緊張感に欠けるな。
仮にも、ここは皇帝陛下がおわす宮殿なのだが。
そして、一室に通された。
「此処で、暫し待たれよ。なお、剣は預からせていただく」
「は」
鞘ごと剣を抜き、衛兵に手渡した。
兼定も国広も宿舎に置いて
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