第一部
第三章 〜洛陽篇〜
三十二 〜参内〜
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です」
「な……」
「……やはり」
驚く星。
一方、稟は想定していたのか、冷静な反応を見せた。
「確か、協皇子の御生母……そうだな?」
「はい。……そして、何進殿の妹君にあらせられる、何太后とは相争う御仲にござります」
だが、合点のいく話だ。
皇后様同士の争いとなれば、一枚岩の宦官と言えども、どちらかに与するしかあるまい。
そして、張譲と趙忠ら筆頭は、今上帝は無論、次代も権力を握り続けるであろうが、それに続く者達はどうか。
権勢欲があればあるだけ、三番手以下に甘んじたままでは飽きたらぬ……そう、考えたとしても不思議ではなかろう。
「稟。皇子は確か、お二人であったな?」
「はい。董太后が御生母の協皇子、そして何太后が御生母の弁皇子がおいでです」
「……して、今上帝は後継者をお決めになってはおらぬ、そうだな?」
「はいー。ただ、噂では陛下は協皇子を好いておられるとか」
「尤も、宮中では何太后が陛下のご寵愛を一身に集めておられる、とも聞き及びます」
複雑怪奇になるのは必然の情勢、と言う訳か。
「何進殿は何と言っても、現役の大将軍。有力な諸侯や、官軍が味方している以上、それを背景にしている限り、董太后は御心が休まらぬ……そういう訳ですな」
星の言葉に、皆が静まり返る。
「ともあれ、深入りは禁物。沙汰はお受けするが、この件に関しては構えて傍観に徹するしかあるまい」
皆、私の言葉に頷く。
「歳三殿。董太后の事、何進殿へ、知らせずとも宜しいのでしょうか?」
「疾風、それも控えた方が良いでしょう。無用な波風を立てる事になりかねません」
「何進さんには申し訳ないですが、お兄さんをこれ以上、権力闘争に巻き込む訳にはいきませんからねー」
「まずは、使者の方をお迎えせねばなりませんし、主の仰せの通り、首を突っ込むべきではないかと」
「そうだ。疾風、星。よもやとは思うが、怪しき者が彷徨くやも知れぬ。警戒を怠るな」
「御意!」
「はっ!」
翌日。
先触れがあり、予告した時刻に、朝廷よりの使者が到着。
如何にも文官といった風情の、初老の男である。
「貴殿が土方殿だな?」
「ははっ」
跪礼を以て、使者を迎えた。
「此度の黄巾党征伐に当たり、義勇軍を立ち上げ、大いに功を上げたとの事。よって明朝、宮中に参内せよ。貴殿に対し、陛下よりのご沙汰がある」
「有り難き幸せにござります」
「うむ。くれぐれも粗相のないようにな。門のところで、この割り符を衛兵に見せるが良い」
「畏まりました」
割り符を押し頂く。
「なお、供は二名まで認めるが、拝謁は貴殿のみとなる。また、帯刀は控えの間までとなる。謁見が済むまで預りとなる故、そのつもりで」
「委細、承知仕りました」
「では、刻限は厳守だ。陛下
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