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センゴク恋姫記
第2幕 曹孟徳
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ええ……ではいくわよ。ええと……」

 そう言ってゴンベエを見る、曹操。
 釣られて春蘭と呼ばれた女性もゴンベエを見る。

「名前、なんだったかしら?」
「ん? ああ、わしか。権兵衛じゃ、仙石権兵衛」
「ゴンベエ、ね。おかしな名前だから言い難いわね……まあいいわ、いくわよ、ゴンベエ」
「華琳様……誰ですか、こいつ」
「面白いから拾ってきたのよ……男にしてはなかなか使えそうよ」
「男が……ですか? とてもそうは見えませんが」

 そう言って上から見下ろすように見る女性に、むっとするゴンベエ。

「なんじゃい」
「…………」
「そう……といい、お主といい……けったいな格好したおなごは、無礼じゃのう。本来ならば斬られても文句言えんぞ?」
「なっ……なんだとぉ!?」

 ゴンベエの言葉にブチ切れる春蘭。

「誰の姿がけったいだと!? 私から見ればお前こそ見たこともない鎧で怪しい事この上ない! 貴様、何者だ!」
「……うっさいのう。声のでかい女じゃ。そう、よ。こやつ誰じゃ?」
「ふふ……春蘭のこと? 自分で聞いてみなさいな」

 この時、曹操はひとつの過ちをした。
 相手が自分の知らぬ土地から来たことを気づいているにも(かかわ)らず、ゴンベエを試すためにわざと、こう言ったのである。
 そのことで、後に頭を痛めることになるのだが……後の祭りだった。
 その理由(わけ)は……

「しゅんらん、というのか。こやつもおかしな名前じゃのう……」

 その言葉に、春蘭の眼が鋭利に光った。

 瞬時に抜き放たれた大刀が、ゴンベエの頭蓋を割るために叩きつけられる。
 だが、それを瞬時に避けたゴンベエ。
 その刀の先には、隣にいた歩哨がいた。

「へっ?」

 ゴシャッ!

 春蘭の大刀が、ゴンベエの代わりになんの罪もない歩哨を二つに両断する。
 その様子に、華琳の顔が青ざめた。

「ちょっと、春ら――」
「貴様……私の真名(まな)を呼んだな」

 鋭利に光る眼光が、大刀を避けたゴンベエを追尾する。
 その眼光は、すでに猛獣のそれだった。

 ――死ね。

 それは言葉だったのか、圧倒的な殺意が言語化したのか。
 曹操にはわからなかった。

 かき消えるような素早さで大刀を振るい、再度ゴンベエに襲いかかる。
 だが、ゴンベエはその大刀の鍔に自らの刀を合わせて、それを受けきった。

(あの春蘭の刃を受けきった!?)

 曹操は、驚愕する眼でそれを見る。
 春蘭の刀を受けきる豪傑など、この大陸に何人いるかどうか。
 そう常日頃思っていた曹操である。
 だが、それを受け止めた者がいた。
 しかも、男で。

(この男……思っている以上に拾いモノかもしれない)

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