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センゴク恋姫記
第2幕 曹孟徳
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の外壁よ。街はこの中にあるわ」
「街!? 城の中に街があるじゃと!?」
「そうよ……いいからいらっしゃい」

 曹操は、ゴンベエに先立ち、城門前に立つ歩哨に声をかける。

「これは孟徳様。おかえりなさいませ」
「ええ。変わりはない?」
「はっ。商人が数名参りましたが、いずれも許可証を持つものでした」
「そう。何かあればすぐに知らせるように」
「はっ!」

 歩哨は、姿勢を正して報告する。
 そして、曹操の後に続くゴンベエに気づき、槍を構えた。

「孟徳様、この者は……」
「ふふ……まあ、不審者ではあるわね」
「なっ!?」
 
 歩哨は、その言葉に、ぎらりと眼を光らせる。

「曲者!」

 その矛先をゴンベエに向けようとして――

「なっとらんの〜……」

 その槍が、すでに歩哨の手の中から消えていた。

「なっ!?」

 自分の手から消えた槍は、すでにゴンベエの手の中にあった。
 歩哨は、自分の手と、ゴンベエを交互に見て呆然としている。

「うちのやつらでも、もうちょっとマシじゃぞ? 雇われたばかりの百姓でもなかろうに。もうちょっと気を入れることじゃな」

 そう言って、ひょいと槍を放るゴンベエ。
 歩哨は呆然として、その槍を受け取った。

「へえ……やるじゃない」
「これでも湯山奉行じゃぞ? あんな隙だらけの相手ならば当然じゃ」
「……興味深いわね。早く話が聞きたいわ」

 そう言う曹操に、ゴンベエは肩を竦める。
 と――

「華琳さまぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 ドドドド……という、砂煙を上げつつ向かってくるものが一人。
 そして、曹操の目の前で急停止する。

「華琳様!」
「あら、春蘭。どうしたのかしら?」
「どうしたのか、じゃありません! どこに賊がいるかもわからないのに、お一人で外に出られるなど……」
「あら。私が賊ごときに遅れを取ると思って?」
「いいえ! そんなことはまったく思ってもおりませんが……」

 春蘭と呼ばれた女性が、必死で否定する。
 その姿に、ゴンベエは……

(また、けったいな”おなご”が現れたのお)

 ぽりぽりと頭を掻いた。

「まあ、黙って出たのは悪かったわね。ちょっとした気分転換のつもりだったのだけど」
「ご無事でしたらよろしいのです! 私はいつでも、華琳様のことだけを考えていますので……」
「ありがとう。嬉しいわ」
「ああ、華琳さまぁ……」

 目の前にいる曹操を神のように慕う様子に、居心地の悪さを感じるゴンベエ。
 見れば、隣にいた歩哨も苦笑している。
 どうやら、これは日常のことらしい。
 勘の良いゴンベエは、そう察した。

「では、屋敷までお供します。華琳様!」

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