第2幕 曹孟徳
[3/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
右往左往しながら避ける若返ったゴンベエ。
本人たちは大真面目なのだが、傍目から見ると痴話喧嘩にしか見えなかった。
「ハァ……ハァ……い、意外にすばしっこいわね」
「そりゃ、おなごの太刀筋じゃ、いくらわしだって避けられるわい。これでも槍一本で一万石になったわけじゃしのう」
「? 一万石? なんのことよ」
「わしのことを知らんのか……というか、ほんとにここは日ノ本なのか?」
「日ノ本……ちょっと待ちなさい。貴方……本当にどこからきたの?」
少女は鎌を構えたまま、訝しむ。
「……その前に、お互い名すら知らぬ。ここはひとつ、互いに名乗るとせんか?」
「……いいでしょう。けど、まずは貴方が名乗りなさい。それが礼儀よ」
少女の言葉に、頷くゴンベエが胸を張る。
「わしは織田家、羽柴籘吉郎様寄騎、仙石権兵衛じゃ」
「……おだけ? 聞いたことないわね」
「な、なにい!? お主、天下一統を目前としておる織田家のことを知らんと言うのか!?」
「………………」
ゴンベエの言葉に、訝しむ少女。
その言葉の真意を考えるも、少女には皆目見当がつかなかった。
「……まあ、ええ。お主の名はなんじゃ?」
「え? ええ……私はね、姓は曹、名は操、字は孟徳……陳留刺史よ」
「なんじゃ、そのけったいな名前は……おそうとでも言うのか?」
「……やっぱり。貴方、大陸の人間じゃないのね」
そう言う少女――曹操は、ゴンベエに向けていた鎌を下ろす。
「見慣れない鎧に、知らない名前。そして私の絶を躱す力……ふむ」
「何を納得しとるんじゃ? わしは皆目見当がつかんのじゃが」
「……ふん。ただし、頭はあんまり良くなさそうね。まあいいわ」
曹操は、鎌――絶を肩に担いで、ニヤリと笑った。
「貴方、面白いわね。話を聞いてあげるわ。私の屋敷にいらっしゃい」
「は……?」
突然、態度が変わった曹操に、ゴンベエが訝しむ。
「いつまでもここにいてもしょうがないでしょ? それとも当てがあるのかしら?」
「いや……まあ、ここがどこかもわからんしのう。孫もソバカスもおらんし……というか、本当にここはどこじゃい」
「それが知りたければついてくることね」
そう言って、曹操は森の中へと歩き出す。
しばらく逡巡したゴンベエだったが……
(……とりあえず行ってみるしかないわい)
覚悟を決め、歩き出した。
* * * * *
森を抜け、禿げた大地をしばし歩くと、目の前に大きな壁に覆われた城が見えてくる。
ゴンベエは、その城壁を見てたまらず声を上げた。
「なんじゃ、この城は……えらくでかい石垣じゃのう」
「これは城牆……城郭
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ