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センゴク恋姫記
第2幕 曹孟徳
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右往左往しながら避ける若返ったゴンベエ。 
 本人たちは大真面目なのだが、傍目から見ると痴話喧嘩にしか見えなかった。

「ハァ……ハァ……い、意外にすばしっこいわね」
「そりゃ、おなごの太刀筋じゃ、いくらわしだって避けられるわい。これでも槍一本で一万石になったわけじゃしのう」
「? 一万石? なんのことよ」
「わしのことを知らんのか……というか、ほんとにここは日ノ本なのか?」
「日ノ本……ちょっと待ちなさい。貴方……本当にどこからきたの?」

 少女は鎌を構えたまま、訝しむ。

「……その前に、お互い名すら知らぬ。ここはひとつ、互いに名乗るとせんか?」
「……いいでしょう。けど、まずは貴方が名乗りなさい。それが礼儀よ」

 少女の言葉に、頷くゴンベエが胸を張る。

「わしは織田家、羽柴籘吉郎様寄騎、仙石権兵衛じゃ」
「……おだけ? 聞いたことないわね」
「な、なにい!? お主、天下一統を目前としておる織田家のことを知らんと言うのか!?」
「………………」

 ゴンベエの言葉に、訝しむ少女。
 その言葉の真意を考えるも、少女には皆目見当がつかなかった。

「……まあ、ええ。お主の名はなんじゃ?」
「え? ええ……私はね、姓は曹、名は操、字は孟徳……陳留刺史よ」
「なんじゃ、そのけったいな名前は……おそうとでも言うのか?」
「……やっぱり。貴方、大陸の人間じゃないのね」

 そう言う少女――曹操は、ゴンベエに向けていた鎌を下ろす。

「見慣れない鎧に、知らない名前。そして私の絶を躱す力……ふむ」
「何を納得しとるんじゃ? わしは皆目見当がつかんのじゃが」
「……ふん。ただし、頭はあんまり良くなさそうね。まあいいわ」

 曹操は、鎌――絶を肩に担いで、ニヤリと笑った。

「貴方、面白いわね。話を聞いてあげるわ。私の屋敷にいらっしゃい」
「は……?」

 突然、態度が変わった曹操に、ゴンベエが訝しむ。

「いつまでもここにいてもしょうがないでしょ? それとも当てがあるのかしら?」
「いや……まあ、ここがどこかもわからんしのう。孫もソバカスもおらんし……というか、本当にここはどこじゃい」
「それが知りたければついてくることね」

 そう言って、曹操は森の中へと歩き出す。
 しばらく逡巡したゴンベエだったが……

(……とりあえず行ってみるしかないわい)

 覚悟を決め、歩き出した。




  * * * * *




 森を抜け、禿げた大地をしばし歩くと、目の前に大きな壁に覆われた城が見えてくる。
 ゴンベエは、その城壁を見てたまらず声を上げた。

「なんじゃ、この城は……えらくでかい石垣じゃのう」
「これは城牆(じょうしょう)……城郭
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