第九章 双月の舞踏会
第八話 タバサ
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見破ったが、見破ったところで窮地は覆らない。
まるで詰将棋のようだと士郎は感じる。
―――いや、それよりも狩人か。
獲物を観察し、研究し、行動を調べ、罠に掛ける。
そこに、士郎は熟練した狩人の姿を見た気がした。
絶体絶命。
何とかこの礫から死なずに逃げることが出来たとしても、着地には絶対に失敗し、そしてそこを見逃すような相手ではない。必ず必殺の攻撃が襲いくるだろう。
今頃その呪文でも唱えているのかもしれない。
死を目前に、だが口元に浮かぶのは諦めではなく、不敵な笑み。
戦士の―――戦場を駆ける男の笑み。
地に向かう士郎に、流星のように襲い来る氷の礫。
最中、士郎は言葉を紡ぐ。
「投影開始」
紡がれるのは詠唱。
中空に、担い手のない剣が現れ。
「投影、待機」
重力に従い落ちる士郎は、空中に浮かぶ剣を蹴りつけた。
全方位から襲いかかる氷の礫を捌くのは不可能だが、一方向だけならば無理ではない。士郎は空中で固めた剣を足場に移動するとともに、前方から迫る礫を干将と莫耶で切り払う。
散弾のように襲い来る礫を、風を切る音だけを頼りに捌き終えた士郎の前には、遮るものは何もなく―――はなかった。
「―――容赦ないな」
鈍い音を混じらせ迫る音。士郎はそこから迫るもの巨大さを感じる。
闇に紛れた氷の槍の巨大さと凶悪さを見えずとも感じた士郎は、反射的に両手に持つ干将と莫耶を投げつけた。狙い違わず両刀は氷の槍に突き刺さり―――。
「壊れた幻想」
爆発を起こす。
氷混じりの粉煙とともに不可視の衝撃が発し。それに押されるように士郎と襲撃者が吹き飛ばされる。空中で体勢を整えた士郎は、地面に着地し顔を上げ、影の中から押し出された襲撃者に視線を向け。
「何故と―――理由を聞いてもいいか―――」
夜空に浮かぶ月は、影の中から押し出され、魔法が解け姿を現した襲撃者を照らし出す。
士郎はその小さな襲撃者―――
「―――タバサ」
―――タバサに問いかけた。
「……」
士郎の問いに、無言でタバサは杖を振るう。
微かに残る氷混じりの粉塵を切り裂き、氷の矢が士郎を襲いくる。
「……やめろ。お前にはもう、魔力が残っていない筈だ」
迫る氷の矢を身体を小さく動かすだけで全て避けた士郎は、静かにタバサに告げる。士郎の言葉の通り、杖を構えるタバサの全身からは汗が滲み息は荒い。限界は明らかだ。しかし、肩を上下させ、顔に疲労を色濃く出しながらも、士郎を見る目には未だ
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